深い睡眠で記憶を「固定化」させる
睡眠の目的は、身体を休ませて疲れを取るだけではありません。脳を有効に機能させるためにも重要です。
主に前半の深い眠りのノンレム睡眠と、主に後半の浅い眠りのレム睡眠は、それぞれ脳にとっての役割は異なります。
ノンレム睡眠の熟睡は、身体を休め身体機能を回復させるだけでなく、日中の記憶の中で重要な記憶をある種オフライン処理して、短期記憶の海馬から長期記憶の大脳新皮質に移し、定着させ「固定化」させる役割があります。
同時に、ノンレム睡眠中の脳脊髄液によって海馬の脳の老廃物が流され、短期記憶を司る海馬の記憶容量に空きスペースが生まれ、これによって翌日の短期記憶容量が確保されます(昨晩ぐっすり眠れて、朝起きて頭がスッキリしていて勉強も仕事も捗るという感覚です)。
このノンレム睡眠の時間が不足すると、脳神経細胞の「洗浄」が行われずに、アルツハイマー病の原因とされるアミロイドβ等の老廃物が溜まり続けます。短期記憶容量が十分に確保されず、遂には新しいことを全く覚えられない認知症状態になりやすいと言われています。
浅い睡眠で感情を整理する
このノンレム睡眠において、前半よりも、ステージ2と呼ばれる後半のノンレム睡眠を確保することが記憶への影響が大きいとされています。記憶の移行と脳神経細胞の洗浄のためには、このノンレム睡眠を十分に深い睡眠にする必要があります。そのためにも、日中の間に適度に運動を行うことで、入眠前には心地よく疲れている状態にしておき、毎夜ぐっすり眠れるようにすることが望ましいです。
一方でレム睡眠のほうにも重要な役割があります。私達は、子供の頃から、朝布団でグズグズしているのなら起きてしまいなさい、と早起きを勧められて育ちました。しかし現代の私達に必要なのは、実は深夜のノンレム睡眠よりも、明け方のレム睡眠(R3、R4)です。
レム睡眠時には、①複雑な視覚認知、②運動野、③記憶を司る海馬、④感情を司る扁桃体の4つが活発になるとされています(特に④は起きているときよりも30%活動量が増えます)。一方で、理性や深い思考の前頭前皮質は全く不活発なことが確認されています。
これらのことから、レム睡眠において、記憶や感情の統合と整理が行われていると考えられているのです。