なかなか眠れない状態が続いたとき、どうすればいいか。浜松医科大学名誉教授の高田明和さんは「実は「眠れない」状況に陥るのは脳の問題だけで、からだは勝手に眠った状態に誘導されていく。私も、睡眠問題に悩んできた一人だったが、ベッドに入って寝つけないときは体のあちこちが徐々に休息モードになっていくのを感じると、いつのまにか脳も眠りに落ちているのだ」」という――。
※本稿は、高田明和『65歳からの孤独を楽しむ練習 いつもハツラツな人』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
薬物療法で廃れた対話療法の本当の効果
19世紀から20世紀にかけて活躍した精神分析のパイオニアだったフロイトが、うつ病などの患者に対してまず行なった治療は、「患者さんの話を聞く」というものでした。
患者さんの話を聞き、苦しみの根源がどのような過去の体験にあるのかを探る――それが現在の心療内科における「カウンセリング」的な治療法の出発点となりました。
その後、20世紀末になって精神医学が発達し、うつ病への「薬物療法」が始まったことで、フロイトが行なったような対話療法は、徐々に廃れていきます。
しかし近年、抗うつ剤のような薬物は、「それほどの効き目がないのではないか」とされはじめています。
「プラシーボ(偽薬。プラセボとも)効果」というものがあります。「この薬は風邪に効きますよ」と言って、ただのビタミン剤などを患者さんに渡すと、その効果を信じた体が免疫力を上げ、風邪の症状などが治ってしまうことがあります。
これまでの抗うつ剤の成果とは、そうしたプラシーボ作用の範囲内ではないか、というのです。実際のところは、プラシーボというのは言いすぎであり、自殺をしようとするような強度のうつ病に対して、抗うつ剤はそれを引き留める程度の効果はあります。
しかし、その前段階であれば、薬に頼らず、医者がその苦しみを聞きながら一緒に解決する「認知行動療法」が、昨今のうつや不安の治療法の主流になりつつあります。