※本稿は、中野ジェームズ修一『血管を強くする 循環系ストレッチ』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。
平均寿命は90歳でも、健康寿命は70歳
日本人女性の平均寿命が90歳に近づいた一方で、健康で長生きの指標となる「健康寿命」は70歳台と、残念ながら大きな開きがあります。近年「人生100年」などと言われるようになりましたが、じつは人間の平均寿命は何万年ものあいだ40歳以下でした。そう考えると、男女ともに40代からさまざまな痛みや不調を訴える人が急増するのも納得できます。
もし体が健康に100年生きられるよう設計されていないとしたら、修復する力を落とさない工夫が必要。そのために役立つのが血管の健康維持です。
血管の健康維持に役立つ、血流を増やす活動をしている人としていない人の差は、年齢を重ねると見た目に顕著にあらわれます。拙著『血管を強くする 循環系ストレッチ』(サンマーク出版)を監修した田畑医師は内科医としてさまざまな患者さんを診ていますが、以前「高齢者になると明確な差が出ます」とおっしゃっていました。それは私自身も25年以上トレーナーを続けているなかで強く感じていたことなので「医師から見てもそうなのか」と思いました。
実際、血流を増やす習慣が病気の予防や未病対策に適していることは、医学的にも明らかです。だからこそ健康診断では血液や血管の状態をしっかり確認するのです。
やはり血液はサラサラがいい
健康診断では、内臓脂肪や血圧、血糖値、血液検査値などから異常値を洗い出しますが、これらはすべて血管の健康状態に関係する項目です。
病気の予防は、酸素や栄養素、免疫物質などを体のすみずみまで届けて老廃物を回収してくれる、健康な血管を維持することから始まります。未病の段階であれば、食事を適切なものへと見直し活動量を増やすことで、糖や脂質にまみれてドロドロだった血液の状態が改善されて血流がよくなり、その結果として血圧も血糖値も下がる。すると血管もしなやかさを取り戻し、健康を取り戻したり維持したりするうえで大いに役立ちます。
さらに、筋肉が増えれば、運動を続けることでインスリンの効きがよくなることもわかっています。これは動脈硬化や糖尿病の進行を食い止めることにもつながること。だから医師は生活習慣病患者にも「運動しましょう」と言うのです。