自分を納得させられれば怒る必要がなくなる

そう。我慢するのではなく、「自分を納得させる」作業をするのだ。

納得しさえすれば、怒る必要もなくなってしまう。

逆に「まずは寝たほうがいい」とアドバイスすることもできる。怒る必要のない時に感情のおもむくまま、怒りのままにぶつかってしまえば、怒りが裏側にある物事や事象の本質を見えなくしてしまう。

それでは、問題解決につながる糸口も見つけられない。

クセをつける時に僕が使っていたのは、プロ選手になってから始めた「ノート」だ。目標や練習、試合で気づいたこと、その日のプレーの反省点や修正点を書き留めている、いわゆるラグビーノートというものだ。

ノートに怒ってしまったことや、ついムカッとした出来事を正直に書いておいて、ふと思い出した時に後から見返す。

「あの時は、つい自分に負けて感情的になっちゃったな」
「じゃあ、どう言えばよかったんだろうか」
「次、そういう場面があったらどうするか」

同じ失敗を繰り返さないように復習するわけだ。こうして一度クセがついてしまえば、反省するどころか最終的には怒る気すらなくなる。

リーダーは正しいタイミングで怒ることが大切

「この人、かわいそうな人なんだな……」

怒りをぶつけてくる相手に対してそう考えられるようになったら、それはもう完全に怒りをコントロールできている。

コントロールできるようになれば、逆に「あえて出す」こともできる。

練習でも試合でも、ミスや失敗に対して僕は怒ったり責めたりすることは絶対にない。でも、チーム全体で単純なミスを繰り返す時、ミスが起きることに対して準備ができていない時ははっきりと怒る。プレーに気持ちが入っていない時、厳しさが足りない時、ルーズボールに誰もリアクションしないような怠慢な雰囲気を感じた時にも、いったんプレーを止めて、時間をかけて全員に怒る。

「こんなのスタンダードじゃない!」
「しっかりやれ!」

姫野和樹『姫野ノート 「弱さ」と闘う53の言葉』(飛鳥新社)
姫野和樹『姫野ノート 「弱さ」と闘う53の言葉』(飛鳥新社)

リーダーとして全員に「これはアカンぞ」ということを、はっきりと伝える。

怒りは、出すタイミングを間違えてしまうとチームや選手個人の自信を失わせてしまったり、ポジティブな状態をネガティブに変えてしまうこともある。そして、そのタイミングというのは“自分のタイミング”ではない、ということも忘れてはいけない。自分の都合で怒るのは、感情にまかせて当たり散らしているのと変わらない。それでは、相手に正確に届かない。だからこそ、正しいタイミングで正しい量を出す。

リーダーは、正しくタイミング良く怒るための“感度の良いアンテナ”を持っておく必要がある。

【関連記事】
【第1回】人生で最もヤバい4年間だった…ラグビー日本代表が「二度とやりたくない」と口を揃える狂気の練習メニュー
なぜ大谷翔平はメジャー屈指のホームラン打者になれたのか…これまでの日本人選手との決定的な違い
高校ではバスケはやりたくない…成績優秀だった娘の突然の訴えに、バスケ選手だった母親が出した答え
ホメられて「とんでもないです」はダメな典型…ホメた人を虜にする世界最高のホメられ返しフレーズ
帰宅が遅い子供に「何時だと思ってるんだ」は三流、「黙る」は二流、では一流の伝え方とは?