唯一、コントロールするのは「怒り」

ある時、リーダーだけのミーティングの帰りにそれをストレートにぶつけた。

「みんな全然アカン!」
「リーダーなのに主体性がないし、練習でもベストを尽くせているか?」
「ただいるだけじゃ意味がない!」

僕の言葉に岩村もカチンと来たのだろう。

「なんでそんな言い方すんだよ!」

感情を隠さないゆえに、真剣にぶつかり合うことも少なくなかった。

だが、ここまでのエピソードと矛盾するようだが、普段の僕は怒る――怒りにかられるということが一切ない。

チームメイトとのミーティングで怒りをぶつけたのは、決して感情に任せてではなく、「ここは本気で出し合わなきゃダメだ」と判断したから出したに過ぎない。

僕が言うまでもなく、怒りという感情は上手く使えば大きなエナジーを生むものになるが、使い方を誤るとそれまで積み重ねてきた信頼や信用、人間関係を一瞬で壊してしまう。

色々な考え方や意識の違いを持った大人が大勢集まっているチームの場合、そうなると一気に沼にハマったり、最悪、空中分解が起きてしまう。

怒りをまずはキャッチして、一度考えてみる

元々は喜怒哀楽のコントロールなんて、まったくできなかった僕ができるようになったのは、大学、社会人時代での経験が大きい。

「怒りはコントロールしたほうが得だ」
「コントロールできるものだ」

そう、自分の意識を変えることができたからだ。

「意識を変える」とは、「そう考える習慣、クセをつける」ということ。

具体的に僕はどういうクセをつけたのか。

難しいことは何もない。怒りを我慢するのではなく、一度沸き上がってきた怒りをまずはキャッチして、反射的に返さないようにするだけでいい。例えるならば、投げたボールが壁に当たってすぐに跳ね返ってくる“壁当て”だったものを、ボールをキャッチして、キャッチしたそのボールを一度見る、というようなイメージだ。

まず、怒りが出そうになったら、怒っている相手の顔の後ろにあるもの――バックボーンや言動の背景を考えてみる。

「なんで、この人はこんなことを言うんだろうか?」
「どうして、こんなことしちゃうんだろう?」

その人の言動の背景を考え想像しながら、よく相手を見る。すると、だんだんとなんなく見えてくる。

「……あぁ、そうか。この人が今できないのは昨日寝てないからかな」