1日に2回眠くなる

生体リズムの最高中枢は脳の視交叉上核しこうさじょうかくです。

これは、視交叉上核を取り去る手術をされると、生体リズムがなくなったという実験が基になっているのですが、のちに、視交叉上核が取り除かれても、規則的に眠ったり起きたりする睡眠――覚醒リズムが出現することが明らかになっています。

このことから、マスタークロックである視交叉上核の役割は、生体リズムの発信源なのではなく、環境と私たちの行動、それにともなう体内の生理的な変化を統合することだと考えられています。

睡眠――覚醒リズムは、1日に2回の眠気をもたらしますが、そのタイミングは、深部体温のリズムや食事などのエネルギー代謝によっても変化します。新しい事実が次々に明らかになってきていますが、1日に2回眠くなることは確かです。

ではなぜ、1日に2回、眠気が発生するのかということは、これはいまだに明らかになっていないのですが、昼の仮眠を経ると課題成績が向上したり、仮眠中に不要な神経が消去されていることなどから、脳が安全に機能するための仕組みだと考えられています。

タクシー会社の事故件数を減らした休憩時間の設定法

私は以前、都内のタクシー会社にご協力いただき、12時から14時の間に仮眠をとるように全車に無線で連絡をしてもらうという取り組みをしました。

タクシードライバーの方々は、この取り組みの前までは、経験則や乗車率を高めることを基準に休憩時間を決めていました。そして、昼の時間帯のニアミスや単独事故が一定数ありました。

それに対して、睡眠――覚醒リズムを基に休憩時間を設定した取り組み後は、事故件数が半数に減り、その後数カ月間経っても、その件数は増加しませんでした。

睡眠――覚醒リズムによる眠気は、安全で確実な仕事の妨げになりますが、その仕組みを理解して仕事のスケジュールを少し変えるだけで、より安全に仕事をするために利用することもできるのです。