カフェインの摂取は、睡眠中の歯ぎしりを招く

眠気覚ましにコーヒーなどのカフェイン飲料を飲むことがありますか?

普段、飲まれているカフェインは、眠気覚ましになっていますか? そのカフェインが、翌日の眠気の原因になっていたらどうでしょうか。

眠気覚ましにカフェインを摂取するという認識を持っている人は多いですが、実は、カフェインに眠気を覚ます作用はありません。眠気を吹き飛ばすような作用があるのではなく、脳が眠いまま眠れなくなるのがカフェインの作用です。

私たちが朝目覚めると、脳脊髄液の中に、睡眠物質プロスタグランディンD2が溜まっていきます。目覚めた状態で時間が経過するほど溜まっていき、脳の外側を覆っている、くも膜のアデノシンの濃度を上昇させます。

アデノシンという名前は、アデノシン三リン酸(ATP)という名前で聞いたことがある人もいるかもしれません。ATPは、私たち生体のエネルギー源です。

これが日中の活動でエネルギーが燃やされて形を変え、最終的にアデノシンになって睡眠物質として働きます。エネルギーが代謝された産物が睡眠物質として働くという、とても合理的な仕組みになっています。

アデノシンは、脳の中に多く存在し神経を抑制する役割をもつGABAの働きを促進します。GABAは、脳を目覚めさせているヒスタミン神経を抑制します。この働きによって、脳は眠るのです。

このうち、カフェインが作用するのが、アデノシンがGABAの働きを促進する部分です。カフェインはこれをブロックするので、GABAによる神経の抑制が働きにくくなり、ヒスタミン神経が抑制されません。

その結果、脳に睡眠物質は溜まっているにも関わらず、眠くなくなるのです。

ここで注意しなければならないのが、カフェインによる弊害です。カフェインは、眠気を阻害しますが、同様に夜間睡眠の質も低下させてしまいます。

カフェインの摂取により、睡眠中に歯ぎしりや食いしばりが増加することが明らかになっています。睡眠中に歯ぎしりが出現すると、マイクロアローザルと呼ばれる、自覚しない短時間の覚醒が生じて、睡眠がプツプツと途切れます。

これによって熟眠感がなくなり、昼間に眠気を催して、その対策としてカフェインを摂取する、という悪循環にはまってしまうことがあります。

脳が眠くなるまでの段階がわかると、より有効な眠気対策、快眠方法がわかります。カフェイン摂取で無理やり眠気をブロックするよりも、眠気の根本の原因である睡眠物質を減らす方法、それが「計画仮眠」です。

起床から8時間後は眠くなる

計画仮眠を有効に活用するには、次の4つのポイントがあります。

①眠くなる前に目を閉じる

会議中に襲ってきた睡魔と闘いながら、どうにかして眠らないようにしようと頑張った挙句に、スッと意識を失う。ビクッと体が動いて目覚めたとき、ほんの少しでも眠れたにも関わらず、またこっくりこっくり船をこいでしまうことがありませんか?

眠気は、我慢すればするほど、結果的に眠かった時間が伸びてしまう、という性質があります。眠気をうまく管理するには、眠気には抗わないことが大切です。

睡眠――覚醒リズムでは、起床8時間後に眠くなりますが、その眠気のピークを過ぎると、生体リズムは徐々に覚醒に向かい、眠気は通り過ぎていきます。この波の眠気のピークのところで眠ってしまうと、睡眠の脳波が出現し、その脳波はしばらく続きます。

一度出現した睡眠の脳波は、簡単に消失することができないので、次に覚醒に向かう波をつぶしてしまい、その結果、眠い時間帯が伸びてしまうのです。

一度睡眠が始まると目覚めた後もボーっと眠気が残る現象は、スピードを上げて走っている車がブレーキを踏んでも急に止まれない慣性の法則になぞらえて、睡眠慣性と呼ばれています。睡眠も始まってしまったら急には止まれないのです。

睡眠慣性による脳の働きの低下を防ぐには、睡眠――覚醒リズムの波でまだ眠くないうちに未来の眠気を取り去るべく仮眠をする必要があります。目安となるタイミングが、起床から6時間後です。

ちょうどお昼休み頃の時間帯に当たる人が多いと思います。お昼休みは、まだそれほど眠気がないと思いますが、このタイミングで目を閉じてみましょう。

ちなみに、慢性的に睡眠不足になっている人ほど、睡眠慣性が起こりやすく、またボーっとする時間も長引くことが知られています。

不用意に居眠りしてしまい、午後の時間帯はほとんど作業ができなかった……なんてことがあったら、累積睡眠量を増やすことも必要です。