郊外の家が「安い」とは限らない
家を買うときに便利な都心や駅近は値段が高いから、郊外の手が届きやすい金額の家にしようと考えるかもしれません。
その際に意識したいのは、住宅ローンの返済額だけで判断しないことです。
たとえば郊外の新興住宅地に手ごろな家を買ったけれど、子どもが都心の私立校に通うようになった。その際、通学定期がべらぼうに高く、3カ月定期で都内のワンルームマンションが借りられるほどの金額になった、ということが起こりえます。
実際、新路線と共に開発された千葉県郊外のあるニュータウンでは、東京駅までの通学定期が1カ月で2万円。これで子どもが2人なら4万円です。もちろん通常の乗車運賃も高く、往復で2000円以上。
確かに郊外に行けば行くほど家は安く買えますが、これではいったい何のためにわざわざ通勤通学にも不便な郊外に家を買ったのか、ということにもなりかねません。
会社員なら通勤定期代は会社から支給されるため気にならないとしても、定年退職後は自腹ですから、都心に出るのが億劫になり、行動範囲が狭まる可能性があります。
持ち家を買うときは「生活コスト全体」を考えよう
また、子どもの医療費助成、私立保育園補助や高校の学費補助など、自治体によって補助金制度や助成金制度が異なります。
そのため、都市部であれば受けられたはずの助成金が、郊外の市区町村では実施されておらず自腹、あるいは金額が下がるということも起こります。たとえば医療費は東京23区は高校生まで無料ですが、私が住んでいる自治体は1回の受診で200円かかります。無料は6歳までという自治体もあります。
すると、もっと便利な場所でもっと値段の高い家を買っても、実は月々の実質的な支出は変わらない、ということもあり得るでしょう。
つまり持ち家を探す場合、単純に家の購入価格や住宅ローンの返済額だけで判断するのではなく、生活コスト全体を俯瞰しておく必要があるということです。
もちろん、住まい選びは金銭面だけではありませんので、そこが気に入ったので負担は気にならないということであれば、まったく問題はありません。
以上が、お金のプロが提案する「マイホームか賃貸か」の考え方です。賢く上手なお金の使い方を学び、豊かな老後につなげましょう。