6.元気か? 疲れていないか? と部下を“診る”

第六は「人を診る」です。別の言葉で言えば「ラインケア」です。部下は元気か、疲れていないか、を診ます。

川村 孝『職場のメンタルヘルス・マネジメント 産業医が教える考え方と実践』(ちくま新書)
川村 孝『職場のメンタルヘルス・マネジメント 産業医が教える考え方と実践』(ちくま新書)

疲労の色が濃い場合は、休養や受診を勧奨します(これも安全配慮義務)。

無理をしても出力は低いでしょうし、万一倒れられたら大きな穴が開いてしまいます。

限界まで追い込まないことが大切です。このとき大事なのは、「キャパシティは人によって異なる」ということです。

「前任者はちゃんとやれたのに、どうしてこいつはやれないんだ」と思うこともあるでしょうが、能力は人それぞれです。

その人の問題というより、人の配置の仕方の問題でしょう。

また、「以前は積極的にやっていたのに近頃はパフォーマンスが落ちているようだ」と感ずることがあるかもしれません。

年齢の問題、業務内容の向き不向き、責任と待遇の不均衡、同僚との関係など、職場において抱えている問題もあるでしょうし、家庭の問題(特に子どものこと、親のこと)が気になっているかもしれません。

プライバシー領域には立ち入りにくいのですが、無理のない範囲で聞き取る必要があります。

上司も自分の手には負えないと思ったら、もう一つ上の上司や産業医に相談してください。

7.“オレ流”を押しつけない

第七は、「“オレ流”を押しつけない」です。今の若者は育ち方が違います。小さい頃からスマホがあり、コミュニケーションのとり方が年配者とは大きく異なっています。

年長者に対するため口も多く聞かれます。

しかし、「近頃の若いやつは……」と言っても始まらないし、そういう自分だってかつて年長の人にそう言われていたに違いありません。

ジェネレーション・ギャップは常に存在するのです(ICTの進歩でより大きくなっているかもしれません)。

世代の問題を除いても、人は一人ひとり違います。得意なことや苦手なことも異なります。それは個性です。

だから会社や社会の共通ルールは教え、一部はそれを強制しますが、ゴールに至る道筋は人によって多少異なってもよいのです。

だから自分のやり方や考え方を押しつけない。

人を変えるのは大変なので、自分が変わった方が楽です。