3.「よくできた点」と「改善を要する点」の両方を伝える

第三は、「よくできた点」と「改善を要する点」の両方を述べることです。どうしても出来が悪いところに目が行きがちですが、多少なりともよかった点を(探してでも)述べることが重要です。

よい結果が出ていなかったら途中の経過を褒める、経過も不十分であれば意欲だけでも褒める(医療の質の評価にstructure[体制]、process[経過]、outcome[結果]の三つの要素[quality indicators]が用いられます)、意欲もなかったら「これからの君に期待しているよ」と述べる、です。

山本五十六の名言、「やってみせ、言って聞かせてさせてみせ、褒めてやらねば人は動かじ」の通りなのです。

褒めるのは「○○もおだてりゃ木に登る」からではありません。人間はもともと“承認”を求めるものだからです。

マズローの欲求五段階説では、土台から順に「生理的欲求」「安全の欲求」「所属と愛の欲求」があり、その上位が「承認の欲求」となっています。

そして最上位に「自己実現の欲求」が来ます。

承認されることは社会に生きる人間としてはとても重要なことなのです。

かといって、歯が浮くようなお世辞を言っても通用しません。意欲をかき立てるには的を射た褒め方をしなければなりませんが、そのためには、ふだんから部下をよく観察して行動の本質を捉えておく必要があります。

オフィスでミーティング中
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即アウトになる言い方

問題点の指摘の仕方にも注意を要します。「〜はダメだ」と言うより「〜が次の課題だね」とか「次はこうしてみては?」という言い方がよいでしょう。

「おまえは新入社員以下だ」「おまえなんか、いない方がマシだ」など人格を否定するような言葉は、ハラスメントになって即アウトです。

反対に、よくできた場合であっても褒めるだけではいけません。

ちょっとできると有頂天になる部下もいます。もともと鼻っ柱の強い部下もいます。さらによくなるためにこれからの課題を告げることが必要です。つまり、指導者たるもの、できる部下にはできるなりに、できない部下にはできないなりに、今までの努力を認めつつこれからの課題を伝えなければなりません。