部下に「老害」と避けられる上司はどこがダメなのか。作家のソン・ヒムチャンさんは「忠告をしてはいけない。相談されたら、正しいことを言わないといけないと考える人がいるが、そうではない。伝え方を変えるだけで、受け取る側の印象は180度変わる」という――。

※本稿は、ソン・ヒムチャン『今日はこのぐらいにして休みます』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。

ビジネスマン指を指す
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「老害」と言われる人が使う決まり文句

「俺の時代にはね」――最近、「ラッテ」と呼ばれるこのような話し方が、いわゆる「老害」と称される人々の代表的な話法として定着した。

「老害」とは権威的にふるまう既存世代を指す言葉だが、必ずしも高齢者だけが該当するわけではない。

訳注※「ラッテ」は、韓国語の「ナッテヌンマリヤ(俺の時代にはね)」というフレーズを縮めた「ナッテ」に由来する。

職場はもちろん、大学や高校や中学校にも、先輩・後輩の序列がある。韓国社会の基底にいわゆる「クソ軍紀」文化があるからだ。

「ラッテ」の話法で話す機会をさぐる先輩たちは、後輩の身なりや言動を取り締まるだけでなく、私生活にまで干渉しようとする。先輩に目をつけられた後輩たちは、喝を入れられるだけでなく、実際に暴行まで受けたりもする。

高麗(コリョ)大学社会学科のユン・インジン教授は、このような現象について次のように説明する。

「古くから存在する序列文化、いわゆる老害的文化を、若い世代がこれといった代案もないまま自然に踏襲しはじめたのです」

「おまえも同じように苦労しろ」ではいけない

もちろん、必ずしも後輩がパワーハラスメントの対象にされるわけではない。先輩が後輩を尊重し、配慮したとしても、後輩側がみずから一線を越えたり無礼にふるまったりするケースも少なくない。

先輩側は、自分が経験した理不尽な思いを後輩にさせないように努力する必要があるし、後輩のほうは気安く接してくれる先輩を「扱いやすい人」とみなさないように注意しなければならない。

そうしてこそ、先輩・後輩のあいだでの不必要な緊張関係がなくなり、望ましい関係を築くことができる。知り合いの看護師から、次のような話を聞いたことがある。

「私は、後輩たちに理不尽な接し方をするのはやめようと思いました。そして、自分の仕事に励みつつ、後輩たちに精いっぱい、手を貸そうとしたのです。

上は先輩、下は後輩の面倒を見るのは大変でしたが、結局、その努力が認められるようになりました。

私が指導し、仲良く過ごしてきた後輩たちが、彼ら自身の後輩たちをやさしく指導する姿を見ると、胸がいっぱいになりました」

「私は苦労してきた。だからおまえも同じ思いをしてみろ」

と考えるより、

「私を苦しめた人たちと同じように行動しないよう、努力しなければ」

と思うようにしよう。

もちろん、優しい先輩という役割は、いくらでも引き継いでかまわない。