奈良さん「町の本屋は焚き火です」

鼎談は60席で満席のところ、定員を上回る申し込みのため急遽席数を増やし、オンラインでも50人が視聴した。壇上でマイクを持つ笑顔とは裏腹に、「まだ気持ちの整理がつかない」という言葉からは、奈良さんにとっても予定外の閉店だったことが思われた。

奈良さんは、本好きな人と本、そして書店主の交わりの物語で43年を振り返った。

「本の集め方には限界があります。自分の個性が集めるからです。しかし集めた本を組み替えさせるような出会いがある。一冊の未知の本を、一人の人が焚き火につぎ足すようにもたらす場合があるのです。町の本屋は焚き火です。そこへ通りすがりの人が何か温もりを感じて立ち寄る。集めた本を発見してくれる人がいないと火は頼りないものになる。本を買ってくれる人は薪を1本置いていってくれる人です。ある日、珍しい薪をもたらす人が現れるとまた焚き火の炎が変わります。43年、そのようにして定有堂という町の本屋の焚き火が消えることなく、輝きに磨きをかける日々が続きました」

日本中の町から書店が消えていく重い代償

岩田さんは、読まなくても参加できるという「読む会」独特の運営方針を披露した。

「あらかじめ読むことが条件になると、それは勉強会の色合いが強くなり、参加しづらい人が出てくる。読まなくても、参加すれば思索を深めることができる。それが大切ではないかと私は思います」

小林さんは、地元の書店から購入する、なるべく現物を見て本を選ぶ、という鳥取県立図書館の2つのポリシーを挙げ、定有堂をねぎらった。

「定有堂さんには40年近く取引に参加していただきました。この場で感謝をお伝えしたい」

昨年度は、鳥取県書店商業組合の20社ほどの加盟店のうち、7社が取引に参加したが、今年度は5社に減った。鼎談後、「取引書店の数が減っても選書の多様性が保たれているか、今後は検証が必要だ」と小林さんは話した。

図書館と書店は両輪となって鳥取の人の本との交わりを支えてきた。人口の少ない地域こそ書店が必要だという小林さんの言葉は、図書館と書店が連携した鳥取の歴史の必然を指し示してもいる。

定有堂の喪失を鳥取の人たちはどのように埋めていくだろうか。それは鳥取だけの問題ではない。町から書店が消えていくことの痛手に、日本中が悲鳴を上げている。

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