日中の講義が終わった後にダイナミックな訓練
課業終了後(16:00〜)の訓練は朝よりも強烈で力強く、ダイナミックです。
夕方の訓練は日中の講義が終わった後、学生舎にいると16:00過ぎに「棒倒し訓練! 集合!」と暑苦しい放送のアナウンスがかかり、それとともにテーマソングが流れて集合となります。このテーマソングは、サバイバーの「アイ・オブ・ザ・タイガー(ロッキーの主題歌)」や、アントニオ猪木の入場曲などのアップテンポで熱い曲が選ばれることが多く、防大生を戦へ駆り立てます。
集合の合図とテーマソングで、学生たちは「うぉー‼」などと叫びながら隊舎の前に集合をし、朝の訓練と同様に整列します。そして棒倒し総長の学生が朝礼台に上がり、「お前らー‼ 気合入ってるか‼」と絶叫し、「うぉー!」と学生たちが返します。その後グラウンドに向かい、模擬戦を行います。
模擬戦は大隊ごとに防御と攻撃に分かれ、本番同様に2分間計測します。
2分以内に棒を倒すと攻撃側の勝利、2分間倒れないと防御側の勝利となります。この取っ組み合いを1日2〜3回ほど行います。模擬戦といえども「真剣(ガチ)でやらなければ意味がない」という意向が強いため、攻撃と防御のガチンコ勝負となります。
訓練が終了すると「なぜか裸の奴がいる」
ちなみに、棒倒しにはいくつかの作戦があります。開始と同時に正面から突撃していくだけではなく、時間差で攻撃を仕掛ける作戦、本隊とは別で少数精鋭で突撃する作戦や、小出しに突撃していく作戦などもあります。
こう聞くといかにも作戦っぽく、効果があるように思えます。ただ実際には効果があるのかというと微妙です。「策士策に溺れる」という言葉がある通り、あまり変な策を考えすぎると、勢いがなくなります。相手の棒の周りをぐるぐると回って相手を翻弄する作戦などは、相手の棒を倒せずに負けてしまうことがほとんどであり、愚策とも言えます。
こうした作戦とは対照的に、「12時ドン」という戦術があります。これは変な小細工をせずに、そのまま真正面(12時方向)に突撃していきます。12時ドンは学生のエネルギーをフルパワーでぶつけることができるので、うまく決まると10秒ぐらいで相手の棒を倒せます。ノリと勢いしかない作戦ですが、防大生の持ち味を最も生かせる戦術と言えるでしょう。
なお棒倒し訓練の際は、頭にはヘッドギア、上着はシャツ、ズボンは廃棄前のボロボロの作業服が支給されます。シャツには首元にハサミなどで切れ目を入れ、シャツを引っ張られても服が破れることによって首が締まらないように工夫をします。
そうした理由から、訓練が終了したときに「強敵のエネルギー弾を耐えた孫悟空」のように衣服がボロボロの布切れになっている学生が必ず発生し、「なぜか裸の奴がいる」という珍現象が生まれるのも、防大ならではでしょう。