開成中学校・高等学校 野水勉先生
ジャック・アンドレイカ、マシュー・リシアック『ぼくは科学の力で世界を変えることに決めた』(講談社、中里京子:訳)
●膵臓がんの早期発見法を開発した高1生の物語
科学好きな少年が、高校1年生で膵臓がんを早期発見する安価な検査方法を開発し、2012年インテル国際学生科学技術フェア(ISEF)の最高賞であるゴードン・ムーア賞を受賞しました。その後もさまざまな賞を受賞し、現在も活躍している著者の物語です。
中学時代に、自身がLGBTQ(性的少数者)であることを告白(カミングアウト)してさまざまないじめに遭います。自傷行為に至った経験もある中で、家族に支えられ、良き相談相手だったおじさんが膵臓がんで亡くなったことを契機に、がんの中でも致死率の高い膵臓がんを早期発見できる検査法を開発したい、という夢と目標を達成したエピソードが紹介されています。
小学生の頃から好奇心と夢をもち、それを探究し発展させていけば、高校生でも世の中に変革をもたらす大きな研究成果をつくり出すことができるという、科学の未来を期待させる元気が出る物語です。
一方、現在の学校教育の中での、LGBTQへの無理解やいじめ問題による当事者の悲鳴を考えさせ、いじめ問題解決への方策、多様性への理解をより深めていかなければならないことを考えさせる啓蒙の本でもあります。
末尾に、家庭でできる科学実験の紹介もあります。
(構成=プレジデントFamily編集部 撮影=梅田佳澄(灘)、市来朋久(渋渋)、小松士郎(開成))