NHKの朝ドラ「らんまん」の視聴率が5月上旬から上向きつつある。ライターの吉田潮さんは「苦労知らずの主人公が上京し、苦難の道を歩み始めた時期と一致する。視聴者は、順風満帆な物語よりも主人公が艱難辛苦に遭う姿を求めているのだろう」という――。
ようやく「らんまん」が面白くなってきた
草花に囲まれ、空を飛ぶ神木隆之介に「メルヘンかーい!」とツッコみながら、どこかで「朝ドラらしさ」を求めていた皆さん、お待たせ。ようやっとエンジンかかってきた気がする「らんまん」。
頭脳明晰だが虚弱体質かつ天真爛漫な酒蔵のボンボンがそこそこたくましくなってきたところで、今後期待するヤマ場も懸念材料も含めて、まとめておこう。
私が奥歯をぐっと噛み締めたシーン
正直、高知・佐川の子供時代は、祖母・タキ役の松坂慶子劇場というか、姉・綾役の佐久間由衣物語という印象。
タキは夫も息子も亡くし、幼い子ふたりと体の弱い嫁を抱え、杜氏や蔵人ら職人たちを仕切る酒蔵「峰屋」の当主。跡継ぎの万太郎(神木)を厳しく育てようにも、体が弱いわ、賢すぎるわ、予測不能の行動パターンに植物オタク道まっしぐらだわで、悩みのタネに。厳しさだけでなく、優しさと貫禄も見せた松坂はある意味、高知編の「主」だった。
そして、ヒロインは姉の綾だった気もする。誰よりも酒造りに興味と情熱を抱いているものの、跡継ぎは当然のごとく弟と決められている。「女は汚れている」という理由で蔵の中は女人禁制など、完全に男社会の酒蔵で忸怩たる思いを抱く綾。
初恋は筋骨隆々の蔵人(笠松将)だったが、密かに失恋。「女にも政治参加・選択の自由を」と謳う自由民権運動に惹かれたりもしてね。
しかも弟と血が繋がっていないから「結婚しろ」と祖母にムチャブリされて。ふがいない弟よりも、不憫な姉の理不尽な状態に女性視聴者が奥歯をぐっと噛みしめたのが、高知編だった。