「らんまん」も昨今の朝ドラと同じかと思ったが

万太郎も昨今のスタイル、ご多分に漏れず幸運なほうである。偏執的な植物学の知識と賢さと紹介状だけで東京大学の植物学研究室に乗り込むっつう無理筋なわけで、万太郎はいわば「人脈わらしべ長者」。

博物館の野田(田辺誠一)から植物学の権威・田邊教授(要潤)に繋がっているし、自由民権運動の活動家(宮野真守)に救われて、偉人・ジョン万次郎(宇崎竜童)に会ったことも功を奏している。あ、そういえば坂本龍馬(ディーン・フジオカ)とも会っているわけで。

夢に向かって突進する万太郎、順風満帆と思いきや、である。

苦難の道が開けて、ちょっとホッとした

東京編で始まったのは、まず家がないこと。植物標本も常人から見ればただのゴミ。幼馴染(中村蒼)の口利きがあったものの、軒並み入居を断られ、おまけに大切な植物標本を盗まれる。盗んだのは貧乏長屋の住人で元彰義隊の倉木(大東駿介)。ま、それがご縁で長屋に入居できたので、災い転じて福となしたわけだが。

そして、東京大学植物学教室では、植物学の基礎があるだけでなく英語も理解できる万太郎は田邊教授のお気に入りに。雑用係として教室に入ることを許されるものの、そりゃあ教室の皆さんは面白くないわけよ。すべてを捨てて死に物狂いで勉強してきたのだから、突如現れた調子のいい天才・万太郎を快く思うはずもなく、ヨソモノ扱いするのも至極当然。

本当は日本文学が大好きな助教授(田中哲司)や講師(今野浩喜)はわかりやすく権威主義。初見では悪役に見えたが、のちに万太郎を助けるかもしれないと思うとワクワクする。

上級生(渋谷謙人)は調子のいい万太郎のパターンを見抜いているし、元教員の画工(亀田佳明)も、権威に逆らわないと諦めモード。気の弱そうな2年生2人組(前原滉&前原瑞樹のW前原)は次第に打ちとけて味方になってくれたものの、万太郎の野望(植物図鑑の礎となる学会誌の創刊)は前途多難。今は石版印刷の工場へ通い、学会誌のために植物絵の印刷技術を習得しようと奮闘中。

万太郎はヨソモノ扱いされることに落ち込むだけでなく、日本における植物分類学の基礎作りが遅々として進まないことに不安を覚えている。田邊教授は国の西洋文化普及にいっちょかみしていて(四字熟語が嫌いでいけ好かない西洋かぶれを要潤が好演)、植物分類学の構築は二の次という姿勢が透けて見えてきたからだ。田邊教授、ヤバイよ。万太郎を利用しているだけかもよ!

そう、ようやく「壁」が見えてきたのである。寝食削って汗水たらしても、目標に近づけない焦りと不安。万太郎の苦難の道が開けて、ちょっとホッとした。トントン拍子よりも、コツコツと積み上げるも花開かない悔しさが観たいんだよね。