鉄道の写真を撮るために線路内に立ち入る、非常停止ボタンを押して走行中の列車を緊急停止させるなど、「撮り鉄」の迷惑行為が問題となっている。鉄道ライターの杉山淳一さんは「鉄道事業者は毅然と対応したほうがいい。高額な損害賠償を請求することがわかれば、迷惑行為も沈静化するのではないか」という――。
鉄道駅でカメラを持つ人
写真=iStock.com/Skarie20
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バイク乗りのイメージを下げた「珍走団」

最近は見かけないけれど、暴走族には先陣して赤信号の交差点を突入する「切り込み隊」がいた。全部隊が通過するまで他のクルマの通行を制止する役割だ。騒音より危険で迷惑な行為だが、彼らの中では尊敬を集める存在だったらしい。

一部の素行の悪い者のおかげで、善良な人々が迷惑する。これはどの分野にもある。「暴走族」と呼ばれた素行不良のおかげで、バイク乗りはさんざんな迷惑を被った。バイクに乗っているだけで暴走族扱いされるし、法的に16歳以上で原付免許を取れるというのに、自治体や高校などで「三ない運動」が起きた。1975年に愛知県教育委員会が始めたそうだ。免許を取らせない、バイクを買わせない、バイクを運転させない、だ。

そんな暴走族もすっかり影を潜めた。「暴走族」を「珍走団」と呼ぼう、というネットスラングが生まれ、バイクの暴走はカッコ悪いというイメージが広まったからではないか。

撮り鉄と「珍撮団」を区別してほしい

撮り鉄の多くも「迷惑撮り鉄」のおかげで困っている。プラットホームの隅でおとなしく撮影していても、だれかが三脚や脚立を使えば危険行為。たいていは駅員や警備員から注意されて済み、見逃されている。それも問題だけれど、もちろん行き過ぎれば全員が退場となる。あるいは、以降は入場規制となり撮影自体が許されない。

本来、「撮り鉄」は紳士淑女の趣味である。しかし世間からはまとめて「鉄道や一般乗客や沿線の人々に迷惑をかけるヤカラ」と思われてしまう。「迷惑撮り鉄」のおかげで、マナーをわきまえた撮り鉄や鉄道ファンは風評被害に遭っている。

だから私は「迷惑な撮り鉄」を「撮り鉄」とは別に「珍撮団ちんとりだん」と呼んで区別してほしいと思っている。カッコ悪い名前にすれば、自分たちの行為がカッコ悪いと気付き、態度を改めてくれるか、退場してくれると思うからだ。しかし残念ながら「珍撮団」は私しか使っていない。ちっとも流行らない。まことに残念だ。