悪質な客への毅然とした対応は再発防止策になる

一方で、この賠償請求が「行き過ぎた私刑」ではないか、という意見もある。少年側は「売り上げと株価の低下は、コロナ禍、他店との競争などの要因がある」と争うとも報じられている。金銭的な罰は重すぎないか、という考え方だ。確かにそうだが、この損害賠償請求の意味は「再発防止」だと筆者は思う。

スシローは筆者の自宅近くにも店舗があり、2年前に食中毒事故を起こした。保健所から5日間の営業禁止処分を受け、対策を講じて7日後に営業を再開した。しかし客足は遠のいており、かつてはピークタイムに何時間も並んだけれど、いまだにスムーズに着席できる状況だ。社会罰を受け続けている。

チェーン全体でも、キャンペーン商品の品不足、ビール半額キャンペーンポスターの事前掲出で批判を浴び、客足が遠のいたという。ここでも社会罰を受けたわけだが、その都度、防止策を実施している。自社が原因なら社会罰を受けなくてはならない。他者が原因なら賠償を要求する。悪質な顧客への毅然きぜんとした対応は再発防止策のひとつである。

なぜか「迷惑撮り鉄」を訴えない鉄道事業者

本題に戻って、珍撮団の迷惑行為に対して、鉄道事業者が賠償請求した話を聞かない。列車を停めたとしても犯人が特定できないという理由もあるだろうけれど、そもそも警察に被害届を出さない。「乗客に被害がなかったから」とやり過ごしているようだ。

しかし、列車を停めれば多くの鉄道利用者が時間を奪われる。定時運行は鉄道輸送の信頼の源泉だから、鉄道事業者は顧客の信頼を失っている。そこに気付かないのか。こうした被害は簡単にお金に換算できるものではないが、数百万円や数千万円では済まないだろう。

珍撮団の行為は実害もある。列車が急ブレーキをかけた場合、固定された車輪とレールがこすれて、円形の車輪の一部に直線ができる。これは「フラット」といって、放置すると走行中に大きな振動や騒音が発生する。乗り心地が悪くなるだけではなく、部品の脱落などの不具合が起きる。修正する作業、交換車輪がなければ車両の運行停止、列車の運休となる。