和気あいあいとした撮影現場が一変
どんな趣味も必ず代償行為の要素はある。あなたの趣味も「狩猟」「採集」「栽培」のどれかに当てはまるだろう。そこに考えが至れば、撮り鉄の行動を理解できると思う。カメラを持った人々が集まれば奇異に感じるかもしれないけれど、たいていは譲り合って和気あいあいとしている。周囲への配慮もできている。年配者が若者にアドバイスし、マナーを示してみせるという場面もある。
そして、これも趣味の分野を問わないけれど、母数が増えると問題行動を起こす人が現れる。撮り鉄も数が増えれば競争が始まる。「もっと近寄りたい」「対象以外の人やクルマなどで遮られたくない」「いっそ列車を停めれば撮りやすい」とエスカレートしていく。こうして他人に迷惑をかける「珍撮団」が発生する。
罵声を浴びせれば恫喝となるし、鉄道敷地や民有地、田畑など他人の所有地に入れば不法侵入だ。勝手に木を切れば器物損壊である。犯罪者だ。列車を停めれば鉄道営業法違反、往来危険罪、威力業務妨害罪だ。
珍しい臨時列車を撮るためにプラットホームの端にいる珍撮団は「われわれはきっぷを買ってここにいる客だ」などという。しかし、鉄道事業者の客は、通勤・通学・旅行などの所用で列車を利用する人々、貨物列車の荷主である。珍撮団の被写体となるために走っているわけではない。アイドルビジネスはファンのために活動し利益を上げるけれど、鉄道とファンの関係は違う。これはすべての鉄道ファンが心掛けてほしいことだ。
少年が起こした迷惑行為の重い代償
少年が回転寿司チェーン「スシロー」で、醤油ボトルの注ぎ口や未使用の湯呑みの縁を舐め、レーンを回る寿司に唾液を塗るなどした事件は記憶に新しい。スシロー本部は警察に被害届を出し、少年は器物損壊容疑で書類送検された。さらにスシロー側は約6700万円の損害賠償を求めて民事訴訟を起こした。その後、金額を大幅に増やす方針であると報道されている。
約6700万円の民事訴訟について、ネットでは賛否両論だ。賠償責任はあるとしても約6700万円は高額すぎる。いや被害に比べれば少なすぎる。スシローの親会社の株価は160億円以上も下がり、スシローの客離れを招いた。約6700万円はスシローの被害額には及ばない。
正社員で定年まで働いた場合の生涯年収は、高校卒で約2億円。大学卒で約3億円という。企業として、人生を台無しにするほどの請求はしたくない、という手心があると思われる。