「ウソの好奇心」は見破られる
「聴くスキル」を身につけるというと、「小手先」というイメージがあるかもしれません、相手に「聴いてくれている」と感じさせるようなリアクションを身につけよう、こんな相槌を打てば相手は喜ぶ、というような。
もちろん、そうしてスキルから入るのもひとつのやり方です。
ただし、好かれるために、いい関係を築くために、自分にトクがあるから「無理やり聴く」のは違います。それは「聴きポジ」とはちがいます。
心から聴きたいと思える自分をつくる。これが、なによりも大切です。
そういうマインドに持っていければ、自分自身も純粋にその場を楽しめますし、結果的にいい人間関係を作れるようになるのです。
みなさんも、セールスの人や取引先、後輩などが自分に対して「ウソの好奇心」を持って話を聴いているとき、なんとなくわかりますよね? リアクションだけ立派だけれど真心が込もっておらず、その場を回すためだけに「聴いている」人。なぜか「聴かれていない」よりもモヤモヤするし、気を遣わせていることに申し訳なくもなります。
同じように、あなたがどれだけ「ウソの好奇心」を相手にぶつけても、相手と心を通じ合わせることはできません。
はじめは自己暗示でも構いません。「自分はこの人のことが大好きで、ひとつでも多くのことを知りたいんだ」という気持ちを意識的に持つようにしてください。「なんて素敵な/おもしろい/自分とは違う人なんだ」と心の中で唱えたり、相手と懇意になる未来を描くのもいいかもしれません。
好奇心の持てない相手=相性が悪い
ただ、何回か会ったあとなど、すでに嫌な部分が目についてしまっている場合は好奇心を持ちづらいかもしれません。そういうときは、相手の「いいところ」だけにぐーっとレンズを寄せ、注目してみてください。
「失礼なところがある……でも仕事はすごくできるし、頼れるなあ」
「見栄っ張りだ……でもチーム全体をよく見ているし、思いやりがあるなあ」
そんな「いいところ」を持っている相手は、自分の知らないどんなことを話してくれるのだろう、と考えてみるのです。
ちなみに、ベースにこの気持ちを持てるようになると、どうしても合わない人に遭遇したときに「だいたいの人に興味を持てる自分が好奇心を持てないなんて、よっぽど相性が悪いんだな」と開き直ることもできる、という副産物もあります。
結局は、相手を尊重したり大切に思ったりする気持ち、真心がすべてです。
上辺のハウツーでは、相手の心を開くことはできません。スパルタな言い方になってしまいますが、いくら小手先のスキルを磨いても、みなさんの「聴く」についての捉え方や聴く姿勢を変えなければ、よりよい聴き手にはなれないのです。
私の敬愛する聴き上手な方々は、みなさん心の底から相手の話を受け止め、本心がにじみ出たリアクションをし、心の底から寄り添ってくれます。
テクニックを身につけることで自信を持つことは大切です。でも、それは第一歩に過ぎません。
「小手先の聴き上手」は、決して相手と幸せな会話をすることはできないことをお忘れなく。