会話の質は聴く人によって決まる

会話とは流動的なものです。聴き手がどの方向に話を深めるか、どんなエピソードを引き出すかで、次から次にと変化します。

少しハードルを上げた言い方をしてしまうと、会話の質は、聴く人によって決まると言ってもいいかもしれません。

「いま、自分はどの方向に話を転がそうとしているのか」

余裕があるときは、そんな意識を持ちつつおしゃべりしてみてください(とはいえ、インタビューなどのお仕事をしていないのであれば、「どうすれば質を高められるか」とまで考える必要はないと思います)。

もちろん、会話は一発勝負ではないので、①を聴ききったあと、「そういえば……」と③に話を進めるのでも構いません。

まずはシンプルに、「この人に関するこの部分の情報を得たい」と興味を持ったところを狙って問うてみてください。聴き手によって会話が変化していくさまを、実感していただければと思います。

謙虚に「情報を教えてもらう」という意識を持つ

「聴きポジ」を取るための心構えは、「教えてもらう」という意識です。

相手のことも、「話し手」ではなく「教え手」と捉えると、どう振る舞えばいいかわかりやすいでしょう。「話を引き出そう」とか「聴いてあげよう」ではなく、「どうかあなたのこと(本人のこと、知識、情報)を教えて!」という気持ちで接する。

実際、「教えていただく」ことで、私たちは多くのことを学ぶことができます。これまでの自分の人生で知らなかったことや考えもしなかったことをインプットできるのです(なんとありがたいことでしょうか!)。

仕事で偉大な成果を残しているような、一流の方にかぎった話ではありません。仕事の後輩であってもママ友であっても、夫婦や恋人同士であっても同じです。どんな些細なことでも(たとえば相手の定番のランチでも、キャリアでも、子育ての方針でも、ニュースへの考え方でも)相手の情報をいただくことで自分はひとつ豊かになれます。

謙虚な気持ちは態度にもあらわれますから、ぞんざいな態度を取ってしまうこともなくなります。

そして、「私の知らないことを教えてください」という気持ちで対面することで、聴きたいことも泉のようにわいてくるはずです。

メモに書かれた質問と疑問符
写真=iStock.com/fotosipsak
※写真はイメージです

会話は、取材。ひとつでも多くの情報をいただく場。

インタビュアーやアナウンサーのようにオフィシャル感を出す必要はありませんが、ぜひこのスタンスで会話してみてください。