とっておきの話題がないのに、周囲との会話が弾む人がいる。元TBSアナウンサーの堀井美香さんは「このような人は、天気の雑談すら大切にしている。必ずしも場を盛り上げる必要はなく、いい空気の会話の流れさえできればいい」という――。

※本稿は、堀井美香『聴きポジのススメ』(徳間書店)の一部を再編集したものです。

楽しそうに会話をしている仲間たち
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相手の考えは「ひとつの考え方」でしかない

誰かと話していると、ときに自分とはまったく違う考えに出会うこともあります。ともすれば議論になってしまうようなテーマもあるでしょう。そんなとき、「聴きポジ」(聴き手のポジション)はどうすればいいのでしょうか?

答えは、「争わないし、受け入れない。でも、受け止める」です。

ひとたび「相手の考えを変えてやろう」という考えが頭に浮かぶと、上手に聴くことができません。反論の機会をうかがい、相手の論の矛盾を突き……と、戦闘モードになってしまう。

そんなときは、心の中でこう唱えましょう。

「あなたはそう思うんですね」

それぞれ別の考え方を持っているという事実だけを受け止め、「どっちが正しい」という価値づけをしないことが大切です。正しいも正しくないもないのです。

このように、相手の話を「受け止める」ことは大切です。しかし、すべてを「受け入れる」必要はありません。そうでないと、「聴きポジ」につくなかで、自分の軸が揺らいでしまいますから。

私は、だれかにいただいたお話は、どんな内容であれすべて自分の「内なる引き出し」にしまっていくようなイメージを持っています。たとえば自身と相反する考え方の人がいても、「ひとつの考え方」と引き出しにしまっていく。

争わないし、受け入れない。でも、受け止める。このスタンスでいれば、自分の軸を守りつつ、たくさんの価値観をインプットしていけるはずです。