人と比べない
長年、高齢者医療の現場にいて目の当たりにしてきましたが、じつは認知症になっていない高齢者が、認知症になっている高齢者をバカにする言動をとることは多いのです。つまり、高齢者による高齢者差別が多いということです。
自分は同世代の人に比べて頭がはっきりしている、ちゃんと歩ける、がんにもかかっていない、オムツも必要ない……。そのように人と比べて、「自分は勝っている」と思うのです。
でも、そういう人たちも、いま勝っているうちはいいのですが、いざ老いが進んで、いわば“負けて”きたときには、自分で自分を受け入れられなくなってしまいます。そこで次の言葉を教訓にしましょう。
認知症などは、長生きをすれば、いずれはみんながかかるものです。かかるのが早いか遅いかだけの違いです。自分はあの人と比べて勝っている、などと自慢することは、少し先の自分を非難しているのと同じことなのです。
自分で答えを出す
高齢者は豊かな人生経験を積んできました。
もちろんその年齢になるまで、多くの失敗を重ねたことでしょう。その積み重ねがいわゆる「肌感覚」を磨いてきました。自分では自覚しにくいかもしれませんが、肌感覚が研ぎ澄まされてきたわけです。そして、優れた肌感覚にのっとって出した答えは正しいと信じていいのです。
ある分野の専門家の意見を参考にすることは大切ですが、それを妄信する必要はありません。自分の体を守る行動です。最善の答えは、自分自身で考えて出せばよいのです。
あらゆることにおいて、他人がどう考えるかではなく、自分がどうとらえるかが大事なのです。自分の人生の結論は、自分で出すようにしましょう。