統合失調症とはどのような病気なのだろうか。看護師の西島暁子さんは「私が勤務した精神科病棟では、活動性が低下する『陰性症状』のために、約10年間一度も入浴していない方がいた。髪の毛が皮脂でコンクリートのように固まり、ハサミでは散髪ができないほどだった」という――。

※本稿は、西島暁子『魂の精神科訪問看護』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。

24時間ひたすらベッドに横になっている
写真=iStock.com/ponsulak
24時間ひたすらベッドに横になっている(※写真はイメージです)

統合失調症には陽性症状と陰性症状がある

統合失調症とは、脳のさまざまな働きをまとめられなくなり、考えや気持ちがまとまらない精神状態が続く病気です。

幻覚や妄想などが起こり、本当は言われていないのに悪口を言われたと思い込んだり独り言が増えたりします。

統合失調症には陽性症状と陰性症状があります。

陽性症状は幻覚が見えたり幻聴が聞こえたり、ありもしない妄想を信じ込んだりなど、現実にはあるはずがないものが現れる状態です。

現実にはなにも起きていないのにいじめを受けたと思い込んだり、誰かに監視されていると思い込んだりする人もいます。

妄想や幻覚は非常にはっきりと見えたり聞こえたりすることもあるので、病気のせいだと気づくことが難しくなります。

24時間ひたすらベッドに横になっている

これに対して陰性症状は、活動性が低下して感情が現れなくなったり、意欲が低下したりする状態です。

身なりにまったく構わなくなったり入浴しなくなったりするほか、引きこもり状態になるなど、健康なときにはできていたことが失われていきます。

閉鎖病棟には統合失調症の患者も多く入院していました。

統合失調症でも慢性期で陰性症状が強い人だと、さまざまな意欲が低下して自宅では生活が成り立たなくなって入院が必要になることがあります。

こうした患者の場合、24時間ひたすらベッドに横になっているだけで、ひどい場合は褥瘡じょくそうができるまで身動き一つしないこともあります。