病気のせいだと納得できると恐怖を感じにくくなる
このように治療によって本来の姿に戻っていく患者さんを何人も見ていくと、目の前の暴力的な行動や正気とは思えないような暴言は、すべて病気のせいなのだということが納得できるようになります。
するとどれほど嫌なことを言われたり、暴力的な態度を取られたりしても、それに恐怖を感じにくくなっていくのです。
さまざまな問題行動が病気のせいだと自分自身で理解できると、患者さんに対するネガティブな感情も和らいでいきます。
病気に対する知識や理解が深まると、不快な態度を取る患者さんに対して、嫌悪感をもつよりも、どうすればこの患者さんを治療してあげられるかというほうに気持ちが向くようになっていくのです。
衝撃を受けた中学生の患者
また病気に対する理解が深まると、患者さんに対して、恐怖よりも看護師としての興味や好奇心をもつようにもなっていきました。
多様な症状に対しても興味深い思いで観察するようになったり、どのような経過をたどって今の状態になったのか、背景や経歴にも興味をもったりするようになりました。
自分自身のなかで変化が起こってくるにつれて、私はどんどん精神科看護という世界に没頭していったのです。
このように精神科看護に面白さややりがいを感じるようになっていたある日のことでした。
一人の患者さんが保護室に入院してきました。
その患者さんは統合失調症で、現実にはあり得ない妄想を絶えず口走っていました。
驚いたのはその患者さんがまだ中学生で、しかも私の出身中学の生徒だったことです。
それまで私が出会った患者さんはどれほど若くても20歳代くらいで、大半が30代~60代でした。
そのためまだ10代前半の若さで陽性症状の激しい患者さんを見て、強い衝撃を受けました。