精神疾患をもつ人は宗教に勧誘されやすい
ほかにも宗教が絡んでいるケースも多く見られました。
精神疾患をもつ人は宗教に勧誘されやすい傾向があるほか、病気に悩んだ結果、親が入信してしまうケースもあります。
宗教の教義によっては治療が難しくなるケースもありました。
例えば輸血を拒否する宗教などが知られていますが、輸血ではなくて投薬を拒否する患者が入院してきたケースもありました。
あるとき入院してきた患者の家族はお酒で病気を治すという宗教の教義に従っていて、治療に薬を使わないように要求してきたのです。
しかし精神科の治療というのは大半が薬物治療です。投薬を拒否されたら有効な治療を行うことは不可能です。結局、その患者は早々に退院となりましたが、最後まで家族と何度も交渉することになりました。
看護師に対して敵意をむき出しにすることも
攻撃的な患者さんや、看護師に対して敵意をむき出しにする患者さんをケアし続けることは簡単ではありません。
特に最初の頃は強い恐怖を感じたり、自分自身もひどく気持ちが落ち込んで帰ったりする日もありました。
夜寝るときに、翌朝出勤するのが恐ろしく感じることもありました。
翌日が保護室担当の日であったりすれば、それだけで気が重くて仕方なく、朝身支度するのも憂鬱でした。
しかしそれでも私が精神科の看護師を辞めなかったのは、入院治療によって患者さんが平常に戻り、安定して退院していく様子を何度も目の当たりにしたからです。
入院時に暴れたり看護師に罵声を浴びせたり、とてもあり得ない妄想を口走っている人が、薬物療法や電気療法、作業療法などさまざまな治療を受けて、退院時には別人のように穏やかになる様子を何人も見てきました。
入院したときは保護室で叫んでいて、今にも看護師に殴りかからんばかりに暴れていた人が、家族とともにありがとうと感謝の言葉とともに退院していくのです。