「受信料義務化」「罰則化」が改革案に

当時は高度成長期なので、事業規模を適正に保ち、民放のように広告を流せば、受信料など取らずにやっていけたはずだが、受信料をなくそうという発想がないので、そちらの方面に話が進むことはなかった。

地上波の放送に衛星放送が加わり、それらがデジタル化され、ブロードバンドも全国に広がり、放送とインターネットなど通信との融合も視野に入ってきた2006年、総務省の「通信・放送の在り方に関する懇談会」は、受信料制度の改革について次のように述べている。

公共放送の維持のためには、不祥事の続発の結果生じた大規模な受信料不払いの問題を解決することが必要不可欠である。また、大量の受信契約の未契約等のまま視聴する事例が余りに多い現状を看過することはできない。

そのためには、上述の様々なガバナンス強化やチャンネルの削減、組織のスリム化等の措置によりNHKの公共性を絞り込んだ上で、過大な水準にある受信料徴収コストを出来る限り削減するとともに、現行の受信料を大幅に引き下げ、NHKの再生に対する国民の理解を得ることが必要である。それを前提に受信料支払いの義務化を実施すべきである。その後更に必要があれば、罰則化も検討すべきである。

通信・放送の在り方に関する懇談会 報告書(2006年6月6日)

国民の問題意識が共有されていない

文中に「不祥事」とあるが、これはNHKのプロデューサーが番組制作費を横領したスキャンダルのことをいい、これがもとで大きな受信料不払い運動が起きていた。

懇談会のメンバーは、完全にNHKの側に立って受信料の問題を述べている。何の疑問も持たずにNHKを「公共放送」とみなし、それを維持するために、受信料不払い問題を解決することが必要不可欠だといっている。

国民の多くはスキャンダルによって、受信料はどう使われているのか、受信料制度そのものに問題があるのではないかと気が付いたのに、そのような問題意識は共有されていない。それどころか、不払いに対して「義務化」とか「罰則化」など強硬な態度で臨むべきだとすらいっている。

しかし、その一方で、チャンネルの削減や組織のスリム化、受信料徴収コストの削減により、受信料を大幅に下げることも提言している。衛星チャンネルを2つ加え、その後も野放図に肥大し、そのコストを受信料として国民に負担させようとするNHKに対し、ノーといってはいる。これは現状を追認せず、組織の縮小を求め、併せて受信料の値下げを求めている点では評価できるだろう。