リスナーとの共犯関係

親しい友人同士のような関係性のもと、その場のノリで始まった遊びが思わぬ展開から世間を巻き込む一大イベントになった。「芳賀ゆい」現象は、純粋な遊び心が秘めたパワーを証明するものであった。

そこには、機を見るに敏な伊集院光の臨機応変さがある。

ラジオの深夜放送の成否は、いかにしてリスナーが楽しめるコミュニティを作り出すかにかかっている。そのためには、パーソナリティの側は常にアンテナを張っていなければならず、またプロデューサーとしての能力を有している必要がある。

アイドルの“プロデュースごっこ”だった「芳賀ゆいプロジェクト」は、まさに伊集院光のプロデュース力を証明したものでもあった。

音楽ミキサー
写真=iStock.com/Tashi-Delek
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番組開始から聴取率トップを継続

「オールナイトニッポン」終了後、伊集院光は1991年3月同じニッポン放送「伊集院光のOh!デカナイト」のパーソナリティに就任する。こちらは月曜から木曜の夜10時から3時間の生放送である。

リスナー参加のクイズコーナー「ザ・ベースボールクイズ」など数々の人気コーナーがあったが、「さよなら!尾行マン」もそのひとつである。

街中の一般人を駅で見つけて尾行し、その様子をプロのアナウンサーが実況する。そして家に着いたところなどでインタビューをして終了というコーナーである(いまのご時世では難しいだろうが、むろん本人の了承を得てから放送し、個人情報は特定されないようにするなど配慮していた)。テレビで人気の「家、ついて行ってイイですか?」(テレビ東京系、2014年放送開始)に先駆けたような斬新な企画だった。

1995年10月からは、TBSラジオに拠点を移す。そのとき始まったのが、「月曜JUNK  伊集院光 深夜の馬鹿力」だった。

現在も続くこの番組は、個人パーソナリティによる深夜ラジオ番組の最長年数を記録している。聴取率でも長年同時間帯トップを守り続け、伊集院光は名実ともにラジオの世界をけん引する存在になった。

自ら番組に届くリスナーからのハガキやメールすべてに必ず目を通すという熱心さも知られるところだ。この間、2016年4月から2022年3月までは同じTBSラジオで「伊集院光とらじおと」という午前中の帯ワイド番組のパーソナリティも同時に務める多忙ぶりだった。