離婚する夫婦の前兆に極端な会話の少なさがある。夫婦問題研究家でパートナーシップアドバイザーの岡野あつこさんは「原因は、子供以外のことで夫婦共通の話題がないと気づくパターン、さらに夫婦どちらかの言動に問題があり、相手を無視するケースがあります」という。典型的な冷え切った夫婦関係3ケースを紹介しよう――。
背中合わせで、喧嘩中の男女カップル
写真=iStock.com/kieferpix
※写真はイメージです

「妻とは話すことがない」
「夫とふたりきりでの会話が続かない」

そんな悩みを抱えている夫婦は少なくない。

原因には2種類ある。ひとつは、「子どもの成長」がキーワードになる場合だ。具体的には、子どもが幼いうちは成長のよろこびを話し合って二人で一喜一憂したものの、大学入学・卒業、就職などにより子育てにひと区切りがつくことで「子ども以外のことで夫婦共通の話題がない」と気づくパターンだ。

一方、パートナーのどちらかが原因のこともある。その場合、夫婦の会話が完全に消滅する前段階で「夫が妻から無視される」あるいは「妻が夫から無視される」というプロセスがあることも多い。たとえば次のようなケースだ。

CASE1 妻より稼ぎが少ない夫

結婚11年目、小学生の子どもを持つY乃さん(38歳)は夫から無視されていることで悩んでいる。4歳年上の夫は、2年前、コロナ禍の影響で勤務していた飲食店を退職した後、派遣社員として働いている。

現在の住まいは、Y乃さんの実家の敷地内に建ててもらった一軒家。Y乃さんは資格を活かし、フルタイムで会社に行く毎日。

「2年前からは、私が一家の大黒柱のような状態です。仕事と家事を必死にこなしていたところ、いつのまにか夫婦の会話がなくなっていることに気がついたんです」

Y乃さんが「何かがおかしい」と気づいたのは、ある朝、珍しく夫より先に家を出ようと「行ってきます」と夫に告げた時のことだったという。

「明らかに聞こえているはずなのに、『行ってらっしゃい』という返事が夫から返ってこなかった。そのときは急いでいたからそのまま出かけてしまったものの、夜になって帰宅した夫に『お帰りなさい』と声をかけたところ、無言で自室に直行してしまったんです」

部屋から出てきた夫に「機嫌が悪いの? 何かあった?」とたずねたY乃さんに対し、夫の返事は「1カ月前からお前のことを無視しているのに、今まで気づかなかった?」と、ひと言。「え、なんのこと? 私、悪いことした?」と聞いても、ふたたび夫がY乃さんに口を利いてくれることはなかったという。

「1カ月前に何があったのか、まったく記憶になかったので日記を見返してみたんです。すると、そこには家事の分担をめぐって夫と言い合いになったことが書いてありました。『稼ぎが少なくなったのだから、もっと家事を手伝ってほしい』と言ったら無言で部屋を出ていった、と。たしかに言い方に難はありましたが、事実なので……。そんなことくらいで1カ月も怒り続けられるのが不思議です」