睡眠の質を低下させる「過覚醒」

詳しい原因はわかっていないのですが、こうした「睡眠状態誤認」の要因だと現代の睡眠医学で考えられているのは、夜になると脳が過剰に敏感になる「過覚醒(hyperarousal)」です。

おそらくベッドに入ってから覚醒しているわずかな時間の恐怖・不安感が、増幅されて脳にインプットされ、「過覚醒」になる。そして過覚醒の脳が、ますます不安に過敏になるという悪循環が起こっているのです。

そのため、たとえば、実際は3分間ぐらいしか目覚めていなくても、6時間ぐらい眠れなかったという苦しい記憶に変換されてしまうのかもしれません。この「過覚醒」については、脳科学的にも遺伝子的にも、まだまだわかっていないことがたくさんあります。一説には、HPA軸という、ストレスに反応するホルモンの仕組みが不適切に活性化している可能性が指摘されています。

「過覚醒」の脳をすぐにクールダウンする方法は、なかなかありません。日中の不安を和らげる習慣を地道に行っていくことが、いちばんの対処法でしょう。

毎日少しずつリラクセーションをしたほうがいい

睡眠は、年齢やその人の置かれた状況によって個人差が大きいものです。たとえば既に長くは眠れなくなっている高齢者が、「8時間寝なければ病気になる」という思い込みをもてば、より不安を強くしてしまうでしょう。しかし実際には、高齢者の睡眠時間にも大きな個人差があり、何時間睡眠がよいと一概には言いがたくなってきています。

西多昌規『休む技術2』(だいわ文庫)
西多昌規『休む技術2』(だいわ文庫)

また、睡眠だけが健康を左右するわけではありません。総じて、日中に元気かつ活発に活動できていれば、大きな問題はないことがわかってきています。睡眠に関しては、「短眠でも元気に過ごせる」といった科学的に有害性が実証されている極端な考え方はいけませんが、自分に適した習慣を選択する柔軟性も大切です。

過覚醒対策で夜にできることとしては、リラクセーションがあるでしょう。ヨガやストレッチなどがリラクセーションにあたりますが、不眠によく用いられるのが「漸進的ぜんしんてき弛緩法きんしかんほう」です。

これはエドモンド・ジェイコブソン博士が1920年代に考案した方法で、基本的には、身体の筋肉を8割程度の力で5秒間ほど緊張させ、次にそれを一気に脱力させて10秒ほど弛緩させることを繰り返します。

漸進的筋弛緩法
出所=『休む技術2』より

このプロセスによって、筋肉が弛緩するだけでなく、脳神経系の緊張もほぐれてくるというリラクセーション法です。毎日行うことが大切ですが、不安が強い人は、即効性がないことで逆に不安になってしまうようです。効果がすぐには表れないことを理解したうえで続けましょう。もちろん、ヨガでもストレッチでも構いません。

繰り返しになりますが、重要なのは、すぐに効かなくても不安に思わず、続けることです。少なくとも2、3カ月は行うつもりでやってみることをおすすめします。

・休むヒント
「漸進的筋弛緩法」は、眠れていないという不安が続いたら試してほしいリラクセーション法です。
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