ベッドにはネガティブなコンテンツを持ち込まない

自分ではスマホの影響はないと感じていても、脳波を測れば深い睡眠が減るなど、睡眠の質が悪くなっている可能性は否定できません。夜スマホの弊害は、ブルーライトの影響もないわけではないですが、むしろその人の精神状態や、選ぶコンテンツなど、認知的・心理的な刺激によるところが大きいのではないでしょうか。

強いストレスを受けている、あるいは不安やイライラが強いという人は、どうしても自分に関連したネガティブな内容のネット情報をたぐりがちです。ブルーライトのような機械的な要因よりも、自身のメンタル状態やコンテンツ内容という感情的な要因が、脳を覚醒させ、眠りを妨げている側面もあるでしょう。

あっという間に「寝落ち」している人は、多少睡眠は浅くなっているかもしれませんが、メンタル的には大丈夫だろうという推察ができます。しかし睡眠の質を高め、脳を休ませるという点でいえば、やはり寝る前はスマホをオフにする、ほかの部屋で充電しておくといった、「わかっちゃいるけどなかなかできない習慣」が望ましいという結論になります。

・休むヒント
夜のスマホはやめたくない、でも睡眠の質を下げたくないなら、せめてベッドではネガティブなコンテンツには触れずに眠りましょう。

熟睡していたのに「一睡もできなかった」と語る女性

コロナ禍によって社会活動が制限されていたなかで、日本人の睡眠時間も多様化してきました。

リモートワークによって通勤通学時間がなくなり、睡眠時間が増えたという人もいます。一方で、なかなか寝つけず、睡眠時間が減った、あるいは睡眠の質がひどく悪くなったという人がいることも、臨床や調査で浮き彫りとなっています。こういった人たちは、「不眠症」というより、「不安症」の要素がより強いのではないかという印象をわたし自身はもっています。

孤独な女性は家で落ち込んでいる
写真=iStock.com/Watto
※写真はイメージです

考えてみれば、いろいろな変化が押し寄せる時代にさまざまなことを不安に感じずにいられないのはもっともな話です。「会社や店の業績が悪化した」「物価は上がっているのに給料は上がらない」「大規模なリストラがあるかもしれない」など、今だけでなく、これからの経済的な不安や社会変化に伴う不安もあるでしょう。このような不安が、入眠困難や睡眠の質の低下に影響しているとしても何の不思議もありません。

これを裏付けるように、ここ数年の不眠症のトピックは、「睡眠状態誤認」というものです。わたしが臨床で経験した「睡眠状態誤認」で記憶に残っているのは、ある50代の女性の入院患者です。

入院してからずっと不眠を訴えていたのですが、看護日誌を見ても、毎晩「良眠」と記録されています。わたしが当直のときに確認してみましたが、夜中もいびきをかいて熟睡状態でした。しかし、次の日、本人に訊くと、「一睡もできなかった」と言うのです。「少し眠れた」などのポジ要素はなく、「一睡も」です。