日本の農家、儲けのからくり
先述の農業経済学者は、日本の保護の2割に過ぎない財政による保護(直接支払い)の部分を欧米の保護の8割以上を占める財政による保護の部分と比較して、日本の方が小さいと言っているのだ。これに多くの農業経済学者が同調する。
日本の農業が少ない保護でやっていけるなら、関税を撤廃できるはずだ。しかし、彼らはTPPなどの貿易自由化には真っ先に反対する。関税を撤廃すると、農家への価格補塡のため膨大な財政負担が必要だという。現在消費者が行っている負担は膨大な財政負担に置き換わる(同値である)ことを認めているのだ。
日本とEUの具体的な保護の姿と農家所得の関係を図で示す。
価格支持ではなく直接支払いの比重が高いEUで、直接支払いと農家所得の比率が高くなるのは当然だ。しかも、日本の農家所得は高いので、所得に占める直接支払いの割合は、日本の方がさらに小さくなる。日本は直接支払いではなく高い価格で支持している部分が大きく、トータルの保護は農家所得を上回る。
それだけではない。EUの公的補助は直接支払いだけである。しかし、日本の場合、畜産を例にとると、直接支払いだけではなく、家畜の導入、畜舎整備、搾乳機械の導入など、ありとあらゆる場合に、高率の補助事業がある。酪農家は納税者の負担によって設備投資をしているのである。農林水産省畜産局のホームページには、これらの補助事業が満載である。日本とEUの何を比較して、日本の公的補助が低いというのだろうか。