「農地面積当たりの直接支払い」が正しい農業保護の姿
国民の環境意識の高まり、アニマルウェルフェアへの対応、200%を超える乳製品関税の削減などを考えると、輸入飼料依存で牛舎飼いの酪農はいずれ維持できなくなる。輸入飼料依存の酪農に飼料価格の補塡を行うことは、ゾンビ企業を延命させるのと同じである。国民の負担は増大し続ける。
輸入飼料依存の酪農家にあえて対策を行うとすれば、希望する農家が、円滑に草地立脚型の酪農に転換するか酪農業から退出できるようにするための産業調整政策である。このようなものとして、エネルギー流体革命により斜陽産業化した石炭産業対策、日米繊維交渉を受けての繊維産業対策、200海里導入による北洋減船対策、日米牛肉・かんきつ交渉を受けてのミカンの伐採対策など、さまざまな対策が講じられてきた。
草地資源に立脚した酪農を維持振興するために必要な政策は、面積当たりの直接支払いである。食料安全保障も多面的機能も、農地資源を維持してこそ達成できる。そうであれば、農地面積確保のため、農業の種類にかかわらず、農地面積当たりいくらという単一の直接支払いを行えばよい。このような単一の直接支払いは、EUが長年の改革の末に到達した農業保護の姿である。
農政を国民や消費者の手に取り戻すために、われわれは何をすればよいのだろうか? 国民や消費者が食料の安定供給や国土の保全は自分たちの問題だという意識に目覚めるしかないのではないだろうか?