食品から運動効果を得られる可能性がある
また、抗老化作用を持つ食品成分、ケルセチン、フィセチンの活用も現実化する可能性を秘めています。今世紀半ばには高齢者が人口の40%を占めることから、健康寿命の延伸に資する食品が活用されることは国民のQOLを向上させるという観点からも大きな意味を持ちます。
医薬の力で健康寿命を延ばそうとするのは必ずしも賢明ではありません。医薬の介入は医療費増大に結びつき、その結果として平均寿命が延びればさらに医療費は増大します。食の力を活用し、加齢とともに徐々に忍び寄る身体機能の低下を防ぐことは医療費の増大を招かず、賢明な試みと言えます。
ひざ痛、腰痛などで2000~3000歩程度しか歩行できない高齢者が、運動機能性食品の力を借りて骨格筋に5000歩程度歩いたかのような履歴を刻めれば、身体ロコモーション機能を維持し、健康寿命を延伸することが期待できます。やがて「運動をする」から「運動を食べる」という時代が来るかもしれません。
もっとも寿命を延ばす食材は「豆類」
老化を遅らせることが一義的に健康寿命を延ばすとは言えませんが、高い相関があることはたしかです。70歳になっても早歩きできる人は余命が長いことを示しましたが、どのような食材を摂ることが長寿へとつながるのでしょうか。
(1)豆類50g(納豆1パック)、玄米茶碗1杯、手のひら半分のナッツ類などを摂取し、畜肉消費を抑えましょう。
2022年、そのような疑問に答える論文が発表されました(*1)。さまざまな食材が寿命におよぼす影響を評価すると、寿命を延伸する最も効果的な食材は豆類(200gまたは100g/日)、その次が全粒穀物(225gまたは137.5g/日)、ナッツ類(25gまたは12.5g/日)と続きます。全粒穀物は精米していない玄米、オートミールなどを指します。
また、畜肉を摂らないこと(0gまたは50g/日)が寿命延伸につながると示されています。毎夕食に納豆1パックを食べることを習慣にしている筆者にとって、豆類がトップにランクインしていることは心強い限りです。
豆類は1日の推奨値の半分の100gでも十分に効果が期待できるとされています。日本人は1日およそ5~60gの豆類を摂取しており、その90%以上は大豆です。納豆1パックはおよそ50gですので、納豆、豆腐などを今まで以上に積極的に摂取して100gに近づけることは可能です。
(*1)https://journals.plos.org/plosmedicine/article?id=10.1371/journal.pmed.1003889