医者は間違えると患者を殺す

僕が医学生の頃、インターンで臨床を経験しました。当時は今よりもずっと乱暴な医療だったので、亡くなる患者さんをしょっちゅう診ていました。

そこで学んだことは、医者は間違えると患者を殺すということです。僕はそういうことが非常に嫌だったので、自分が臨床医になることも嫌になってしまいました。

でも僕のように人が死ぬのが嫌な人間ばかりだと、医者がいなくなってしまいます。だから患者さんが死ぬのは仕方がないことだと、どこかで吹っ切らないといけません。

そういう気持ちのバランスを保つ装置の1つとして、慰霊祭があるのではないかと思っています。

虫塚を自分の墓にすることはできなかった

2015年、虫の法要を行っている鎌倉の建長寺のご厚意で、虫塚というものを建てさせていただきました。

日本はおもしろい国で、筆塚のような塚をつくる風習があります。筆塚は長い間使って古くなった筆を供養する塚です。こういうことを世界の他の国の人に言っても、ほとんど理解してもらえません。

建長寺の虫塚は、僕の後輩でもある建築家の隈研吾さんに頼んで設計してもらいました。普通は石の塔のようものを建てると思いますが、隈さんはジャングルジムみたいなユニークな形をした虫塚にしてくれました。