SIMカードを持つだけで拷問や投獄の対象になる

2021年夏、米軍が撤退したアフガニスタンで、武装勢力タリバンが再び権力を掌握した。タリバン政権は旧政権の関係者や少数民族の弾圧を続けており、その実態を海外メディアが報じている。

2022年8月15日、カブールの空港近くで、政権奪取1年を祝い歓喜するアフガニスタンのイスラム主義組織タリバンの戦闘員(アフガニスタン・カブール)
写真=AFP/時事通信フォト
2022年8月15日、カブールの空港近くで、政権奪取1年を祝い歓喜するアフガニスタンのイスラム主義組織タリバンの戦闘員(アフガニスタン・カブール)

タリバンによる迫害の主な標的となっている民族集団のひとつに、ハザラがある。アフガニスタンでは3番目に多数を占める民族だ。人口は300万人ほどで、アフガニスタン国民の1割を占める。

アフガニスタンで主流のイスラム教スンニ派と異なり、ハザラの人々にはシーア派が多い。宗教観の対立を理由として、長年迫害の対象となってきた。

また、容姿の違いも差別の要因になっているとされる。平均的なアフガニスタン人とは異なり、ハザラの人々は比較的に色白だ。東洋でよく見られる顔立ちをしており、日本人にも風貌が近いとされる。

こうしたハザラの人々をはじめ、少数民族が迫害の標的となっている。特に、政権崩壊以前に政府関係のポストに就いていた人物やその家族をターゲットとし、意図的に痛みを与える形で残虐な刑に処す蛮行が絶えない。

米軍が撤退しタリバンが実権を掌握した2020年8月から4カ月後、米ワシントン・ポスト紙はすでに、「タリバンはいま、2001年に政権を追われて以来かつてなかったほど、強大になっている」と指摘している。タリバンが不適切とするSIMカードを所持しているだけで、拷問や投獄の対象になるという。

英紙が報じたタリバンの拷問施設の実態

影響はいまも続く。英インディペンデント紙によると国連は昨年、タリバンが実権を掌握した以降、法的に認められない殺戮が少なくとも160件、拷問が56件、不当な逮捕が170件生じたと発表している。

これらは国連によって正式に文書に記録された件数のみを集計したものであり、実際には悲惨な事例はさらに多数に上るとみられる。