変わり果てた遺体…爪を剝がされ、指は切断されていた
ファルハンさんは身体じゅう、打撲で青黒く変色していた。左頬の皮膚は、裂けている。左目は腫れて眼球が見えないほどで、口は傷と水ぶくれだらけだ。手脚はさらにひどかった。左手の爪は皮膚から引き剝がされ、左足には指が2本しか残っていない。そして全身の至る所に、刺し傷が口を開けていた。
ゾーヤさんは痛切に語る。「切り刻まれた遺体を入念に観察して、それが兄であることを確認しなければなりませんでした」
家族とゾーヤさんは、次にタリバンに拘束され虐待されるのは他ならぬ自分たちなのではとおびえながら、日々を生き抜いているという。
このような虐殺の事例は、ほんの一握りに過ぎない。インディペンデント紙の報道によると2月、タリバンは100体以上の遺体を集団埋葬したと発表し、すべて麻薬中毒者であると主張した。死因の詳細は明かされず、隠蔽工作との見方が強まっている。
「人々の生活を破壊することに執念を燃やしている」
アフガニスタンを掌握したタリバンは迫害行為を続けており、欧米側への協力者やレジスタンスと疑われた住民へ拷問を加えている。
タリバンに関しては、女性への迫害や人権侵害が重大な問題として頻繁に報じられている。ロイターは、国連が「人道に対する罪」であると糾弾していると報じる。
こうした弾圧と並び、本稿で取り上げた海外各紙の報道が示すように、前政権の治安当局関係者やレジスタンスへの関与者に対する迫害も深刻な問題と言えよう。
ハザラやタジクの人々など、少数民族をターゲットとした弾圧がアフガニスタンの地では続く。アムネスティで南アジアを担当するサミラ・ハミディ氏は、インディペンデント紙に対し、「タリバンは昔と何も変わっておらず、昔と同じ考えと手口で、人々の生活を破壊することに執念を燃やしている」と指摘する。
状況はむしろ悪化しているのかもしれない。南部ナダリ地区で農業を営む男性は、ワシントン・ポスト紙に対し、2011年まで同地を支配したタリバンを現在のタリバン暫定政権と比較し、こう語った。「唯一、彼らの統治に変化があった点は、より残忍になったことです」
かつて戦闘員にだけ興味を抱いていた戦闘員たちは、勝手に税金を徴収しはじめ、食料や住処を要求し、これに応じない村人を徹底的に痛めつけたという。
2021年8月の米軍撤退以降、大きなニュースとして報じられることのなくなったアフガニスタンだが、政府が国民を迫害するという信じがたい構図は相変わらず続いているようだ。