サイドビジネスが思わぬ大成功

副業としてこのビジネスを始め、ついには本業をやめて乗り換えた人物もいる。ニューヨーク・ポスト紙は、教師から犬の散歩の専門職に転向した男性のケースを取り上げている。

ブルックリンに住む34歳のマイケル・ジョセフスさんは、私立の特別支援学校で教師をしていた。教師時代の年収は4万ドル(現在のレートで約520万円)以下だったという。物価の高いニューヨークで家族を養うジョセフスさんにとっては、やや心許ない数字だ。

大の犬好きでもあったジョセフスさんは、すこしでも収入の足しになればと思い、犬の散歩を副業としてスタートした。パンデミックが始まる1年ばかり前、2019年初めのことだった。

事業は瞬く間に拡大した。わずか30分の散歩に対し、喜んで20ドル(約2600円)を払う顧客が多いことに、ジョセフスさんは驚いた。新たなサイドビジネスを始めたばかりの同年、犬の散歩だけで3万5000ドル(約450万円)を稼いだという。本職の給料に迫る数字だ。

趣味が高じてビジネスオーナーに

本格的なビジネスとしての可能性を見抜いたジョセフスさんは断腸の思いで生徒たちに別れを告げ、犬の散歩ビジネスに専念する道を選んだ。自身の散歩会社「パークサイド・パプス」を正式に立ち上げ、昨年は12万ドル(約1600万円)を稼いだという。

ジョセフスさんはニューヨーク・ポスト紙に対し、「ありがたいことでした」「ビジネスオーナーとして暮らしている自分に驚いています」と述べ、突如訪れた人生の転機を噛みしめている。

パンデミック中は人々の在宅時間が伸び、事業は一時的に落ち込んだという。現在では人々がオフィスに戻りつつあり、散歩の需要は再び高まっているようだ。フルタイムの従業員を5人雇い、1日に最大30匹の犬を引き受けている。

顧客との関係も良好だ。仕事柄、裕福な依頼主と接することが多く、ある顧客はぜひ別荘を使ってくれと定期的に申し出てくれるという。なにより、大好きな犬と過ごせるのはかけがえのない喜びだ。生徒たちと会えなくなったことを寂しく思う日もあるが、子犬と過ごす日々はジョセフスさんの新たな生きがいとなっている。

動物好きというのは、それだけでひとつの才能なのかもしれない。言葉の通じないペットを一日中相手にする仕事には苦労も多いだろうが、ドッグ・ウォーカーたちは急増した依頼に戸惑いながらも、楽しんで仕事をこなしているようだ。

当記事は「ニューズウィーク日本版」(CCCメディアハウス)からの転載記事です。元記事はこちら
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