多くの人がマスクを外したときに“ギャップ”を感じる
ゼミの講師を務めた富田瑛智さんが読売新聞に答えた説明によると、「人間は脳で『節約的な想像の仕方』をする。それが影響している」とのこと。つまり見えない部分を想像する際に、顔の歪みや肌の荒れを排除して、整った顔で想像するので美人やイケメンに見えやすいのだということです。今の時代はルッキズム(外見至上主義)という外見による差別をなくそうという動きが顕著ですが、やはり自他の外見が気になるのは生物としての脳の働きでもあるようです。
では、マスクをはずした時のギャップについて、いったいどれだけの人たちが気づき、意識しているのでしょうか。コスメ商品の販売などを手掛ける福美人という会社が、2021年6月に、全国の20代・30代男女1070人を対象に行った調査によると、「異性がマスクをはずした時の印象に“ギャップ”を感じたことはありますか?」という質問に対して、「よくある」または「たまにある」と答えた人は、男女ともに6割を超えていました(*2)。
そのギャップの中身を見ていくと、笑顔が素敵だったというポジティブなものから、「マスク美人が多い」「マスクしているとイケメン。はずすと残念」といったものまで、さまざまです。マスクを着けたりはずしたりするだけで、自分が知らないところで期待されたりがっかりされたりしているかもしれないと考えると、それはそれでちょっとしたストレスですが、その場限りの対面であればマスク美人やマスクイケメンに見られるのは嬉しいことでしょう。
しかし、新しく友達や仕事仲間になった人と初対面の時からマスクを着けた状態で接している場合、マスクをはずす時のハードルを上げてしまう側面もあります。
マスク効果により、相手が自分の顔を見た時に、理想の顔を想像してしまう。そのギャップにみんなが気づき始めているために、自分の素顔を見せづらい心理が働いてしまうケースも、これからは増えそうです。
(*2)PR TIMES「【実はあなたも見られている⁉】男女別 異性がマスクを外した時のギャップを調査!マスクを外した顔でつい見てしまう部分とは…?」
彼氏の前でマスクを外したことがない女子中学生
関西地方には、『探偵!ナイトスクープ』(ABCテレビ)という人気番組があります。毎回探偵役の出演者が、視聴者からの依頼に応えていくというものですが、2022年9月の放送で「マスクを絶対に外さない中1の娘」という、マスクに関連するテーマがあったので紹介します。
依頼者は40歳の女性です。中学1年生の娘が、マスクを絶対にはずさない。どのくらいの徹底ぶりかというと、中学に入学してから、家以外では一度もはずさないというのです。唯一昼ごはんの時はマスクをはずすものの、それも食事を口に運ぶ瞬間だけで、すぐに元通りマスクを着けるのだとか。ただ、これだけでは番組になりません。
この女子中学生には、付き合って2カ月の彼氏がいます。その彼氏の前でも、一度もマスクをはずしたことがないというのです。彼女は、マスクをはずして素顔を見せることで、彼氏にがっかりされるのではないかと心配していました。まさにマスクのギャップを恐れている状態です。そして彼女は、彼氏がマスクをはずした顔を見たこともありません。お互い、素顔を知らない同士だったのです。
ここで探偵が動きます。二人にマスクを取ってみようと提案。マスクをはずした二人に、果たしてどんな結末が訪れるのか。ここから先はネタバレになってしまうため伏せますが、私も「いったいどうなるんだ」と思いながら見入ってしまいました。