着けなくてもいいのに着けるのはなぜか
基本、ゼミではカメラをオンにしてディスカッションを行いますので、参加者全員の顔が画面に映し出されます。マスクを着けても着けなくてもいいなら、「着けたい」ということかもしれません。各自の周囲にはおそらく他に人はなく、感染リスクがないのに、なぜ学生たちはマスクを着けるのか。私には不思議でした。
自分が知らないだけで、自宅でのマスクの着用が奨励されている? 家族の仕事の事情などで感染管理が厳しく、自宅でもマスクを着けている? 顔を見られるのが恥ずかしいから? みんなが着けているから、自分も着けたほうがいいかなと思った?
ゼミの時間は、学生との会話に集中しているので気にならないのですが、ゼミが終わり、自分もマスクを着けたりはずしたりする中で、オンラインゼミでもマスクを着けている学生たちの行動が、ますます不思議に思えてきたのです。そして、外に出ていろいろな人を見ているうちに、こう思うようになりました。
「もしかして、うちの学生だけじゃなくて、多くの日本人はもう、マスクをはずしたくないのでは?」
マスクをしていたほうが魅力的な顔に見える
さて、学生がマスクを着け続けることに時代の変化を感じるところもありますが、実はコロナ前から「だてマスク」という言葉があり、インフルエンザや花粉症の流行とは関係なく、マスクを着ける若者は少なからずいました。
心理学的な観点からすると、それは「人に見られたくない」「人と話したくない」といったように、外部とのコミュニケーションからなるべく距離をとりたい心理から生まれるようです。確かに、誰しもそういうことはあるでしょう。マスクで顔が覆われていると、外部から守られている安心感があるという話は、何となく理解できるところです。そしてこのだてマスクには、もう一つ大きな効果があります。それは、マスク美人、マスクイケメンに見られやすいということです。
マスクをした人を見ている側の人間は、マスクで隠れている部分を減点法ではなく、理想を想像して加点法で評価するからなのだそうですが、それを裏付けるような実験が読売新聞で紹介されていました(*1)。実験をしたのは、関西国際大学の心理学部の男子学生4人です。彼らは、何人かの男女の顔の下半分を隠した画像を作り、元画像と比べてどちらが魅力的に見えるか、36人の学生に評価してもらいました。その結果、下半分を隠していたほうが魅力的に感じられるという結果を得たのです。
(*1)読売新聞オンライン「【マスクと顔】<上> 隠した方が魅力的? 顔を『盛る』SNS世代と好相性」