1月の「都道府県対抗女子駅伝」での大活躍で新ヒロインとなった岡山のドルーリー朱瑛里選手(15)。スポーツライターの酒井政人さんは「メディアの過剰報道や一般人の無断撮影、SNSへの投稿により、成長を妨げている面がある。伸びしろのある若手アスリートを大人は静かに遠くから見守らなければならない」という――。

軽薄なメディアが将来有望なアスリートを殺すのか

今年1月15日の「都道府県対抗女子駅伝」で新ヒロインが誕生した。岡山のドルーリー朱瑛里しぇりだ。津山市立鶴山中学3年生は中学生区間の3区(3km)を9分02秒で走破。17人抜きを演じると、区間記録を8秒塗り替えた。

表彰式後に区間賞などのトロフィーを掲げる岡山のドルーリー朱瑛里=2023年1月15日、京都市体育館(写真=時事通信フォト)
表彰式後に区間賞などのトロフィーを掲げる岡山のドルーリー朱瑛里=2023年1月15日、京都市体育館(写真=時事通信フォト)

ドルーリーはカナダ人の父と、日本人の母を持つ。腰高のフォームでスピード感あふれる走りに魅了されたファンは多いだろう。同駅伝大会はNHKで生中継されたこともあり、SNS上で一気に注目度がアップし、“トレンド入り”した。

その2週間後に開催された市町村対抗の「晴れの国 岡山駅伝」にはメディアやファンが殺到。そのため、さらに翌週の「BIWAKOクロカン・第8回全国中学生クロスカントリー大会」にもエントリーしていたが、直前に代理人弁護士を通じて「欠場」を表明すると、以下のコメントを発表した。

<陸上以外のことも大きく報道されて戸惑いました。私は可能な限り普通の生活をしながら陸上を続けていくことを希望しています>

一部の過熱報道や一般人による無断撮影、SNSへの投稿などに不安を抱いたことが理由のようだ。なぜドルーリーはここまで脚光を浴びることになったのだろうか。

日本のメディア、特にスポーツ紙や週刊誌、ワイドショー番組などは熱しやすく冷めやすい体質で、とかく大袈裟な表現でとりあげる傾向がある。注目の選手は部数や視聴率を稼げるということもあり、実力以上に持ち上げる悪い癖があるのだ。

ドルーリーは確かに陸上界に誕生したニューヒロインであり、先輩アスリートの中には「非の打ち所がない、中学生にして完成している」と評価する人もいる。だが、過熱報道が成長の妨げになってしまっては本末転倒だ。そこで、都道府県対抗女子駅伝後の報道の在り方を振り返ってみたい。