どのようにして有望アスリートを守るのか?

それでは、どのようにして有望アスリートを守ればいいのか。

オリンピックなどを含めて、規模の大きなスポーツ大会では基本的に全選手が競技終了後、メディア取材が可能な「ミックスゾーン」を通過することになっている。そこで記者が選手に声をかけて、取材がスタートする。なかには記者の声を無視して、素通りしていく選手もいる。体調の問題もあり、取材に応じるかどうかは選手本人に委ねられることになるのだ。

外のジャーナリストとの女性の主要なインタビュー
写真=iStock.com/AleksandarGeorgiev
※写真はイメージです

過去に日本の陸上界で特別措置がとられたのは高校3年時の4月に男子100mで10秒01をマークした桐生祥秀くらいだろう。夏のインターハイでは桐生のみ日本陸連のスタッフが取材に対応。ミックスゾーンではなく、他の選手とは別のタイミングで取材時間が設けられた。大人の目があったこともあり、競技に関係のない突飛な質問が飛ぶことはなかったと記憶している。

ただ春から高校生になるドルーリーにそこまでの手厚い対応をするのはそぐわないかもしれない。特別措置により余計に目立ってしまう恐れがあるからだ。ミックスゾーンを通るようにしつつも、スタッフが目を光らせて、取材が長くなりそうな場合はうまく切り上げるなどの配慮をするといいのではないか。そして、ドルーリー側はミックスゾーン以外の取材はすべて断るようにすればいい。

規模の大きな大会取材は事前に申請が必要なケースが多い。ミックスゾーンに入れるのは大会側が取材を認めたメディアだけになる。取材できる場所をミックスゾーンに限定することで、競技以外のことを探ろうとするメディアを排除できるはずだ。

とはいえ、ファンなどによる写真や動画の撮影を食い止めるのは簡単ではない。近年、日本陸連はアスリートへの盗撮を問題視し、競技場で取り締まりを強化している。しかし、駅伝など公道を使うロード競技では対処しきれず、事実上、野放し状態になっている。

大会中の写真や動画の肖像権は主催者(社)に属していることが多いものの、個人の私的利用を目的とした場合はOKとしている。ネットやSNSに投稿して不特定多数が見られる状態にするのは肖像権の侵害に当たる可能性が高いとはいえ、厳しく取り締まっている主催者はほとんどない(大会・主催者によって異なる)。

当然、大会以外のプライベートで本人の許可なく、写真を撮るのは肖像権の侵害になる。アスリートが競技に集中できる環境を整備するために、ファンも「肖像権」についての初歩的なルールを守る必要があるだろう。

ドルーリーは高校でも陸上を続ける意向だ。一部メディアや心ないファンの行為で15歳の少女を苦しめたくない。日本の女子中距離界の新星として将来が非常に楽しみな選手だけに、大人たちが温かく遠くから見守ることが大切ではないだろうか。

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