人間関係で無駄なエネルギーを浪費しないコツ

じつは私自身、以前は感情コントロールがうまくできず、仕事が手につかなかったり、上司とギクシャクしてパフォーマンスが上がらないということが多々ありました。

以前の職場にいた上司は、部下の仕事の仕方にやたら細かくダメ出しをし、頭ごなしに否定する人物でした。当時の私はそんな上司の攻撃に遭うと、ただオロオロ。何とか上司の機嫌を取りなそうと焦り、過剰反応していました。

それはかえって上司の思うツボで、さらに怒りと攻撃が増すという悪循環。そんな上司に対して恐れと同時に怒りや嫌悪感を抱いていました。

それは上司に振り回されていると同時に、自分の感情に振り回されている状態だったと思います。そんな自分にも嫌気がさして、自己嫌悪。

結局、あるきっかけで、私はその悪循環を断ち切り、上司と心理的に距離を置くことで、冷静になることができました。

上司が突っかかってきても、「あぁ、またいつもの上司のクセが出たな」と考え、適当に合わせながらスルーする。すると上司のほうも冷静になり、これまでのようにカサにかかって攻撃することもなくなりました。

それどころか、感情的にならずに上司と向き合えるようになると、相手の意外な能力や長所に気がつくようになりました。むしろ適切な距離感を保っている分、仕事がしやすい相手に変わったのです。正直、この変化には私自身が驚きました。

嫌な人こそ、じつは人生を大きく変える重要人物の可能性が高い――。そのときの体験が、私に1つの気づきを与えてくれたのです。

嫌な人とでもいい仕事ができる距離感とは

これは後で詳しくお話ししますが、私たちが相手に対してネガティブな感情を抱く場合、自分の心の中の偏りや思い込みが大きく関係していることが分かっています。

つまり、相手に原因があるというより、自分のほうに原因があるということ。

その証拠に、同じ状況を体験したり、同じ人と向き合っても、人それぞれに抱く感情が違うのです。

ある人にとっては怒りの対象になる出来事が、ある人にとっては好ましいと認識される。感情は客観的な事実によってのみつくられるのではなく、自分の主観、心の偏りや思い込みなどが大きく関係しているのです。

感情にまかせて、相手を拒絶したり否定したりしているうちは、自分の中の偏りや思い込みに気づくことも、正すこともできません。それらを自覚し、意識化すること。そして自分の考え方や行動を修正することで、その偏りや思い込みを正すことができます。

私自身、苦手だった上司と親しくなるとまではいかずとも、新たな関係にシフトすることができました。自分自身が変化することで、上司の嫌な部分だけでなく、長所も認めることができるようになったのです。

不思議なことに、そういう関係になると、一転、仕事をする上でお互いが協力し、補完し合う、前向きな関係に変化したのです。

この体験は、嫌な人とでもいい仕事ができる、という大きな自信になりました。

そして自分自身、大きく成長することができたと思っています。