脳トレよりも、人と直に会うことが大事

脳というのは複雑で深遠な場所なのです。誰もが同じ脳トレで効果が上がるなんてことはないと理解してほしいと思います。

テーブル、記憶運動、神経学で論理テストを解く集中退職した男
写真=iStock.com/Motortion
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また、計算ドリルを続けてやることができて、そのスピードや得点は上がってもほかのテストの点はまったく上がらないという研究結果が多数出ています。

脳トレをすすめられたら、「もう十分ボケているから、好きなことだけやらせてちょうだい」とお断りできたらいいですね。

認知機能の低下を防ぐことに有効なのは、人との交流です。そして、自分のことをアウトプットしていくことです。

デイサービスは、まさにこの交流とアウトプットの場です。ひとりで本やテレビで楽しめる人も、「このドラマが面白かった」「最近の朝ドラはテンポが速すぎてついていけない」などと周囲の人たちに感想を漏らす。そんなお喋りが楽しめるように工夫してほしいと思います。

子どもたちも、親に脳トレドリルをすすめるよりは、一緒にお茶を飲み、お喋りする、季節の行事をする、そして笑い合うということがいちばん認知症の発症や進行を遅らせるということを知ってください。

世の中を知った気になると脳が凝り固まる

「この年でどこへ行っても仕方ない」「若いときに十分旅行したから、何も見なくてもいいわ」とひきこもっている方がいます。

このコロナ禍の自粛生活で、ますます出不精になった方も多いでしょう。

旅は遠くに行くことだけではありません。

日常からちょっと切り離された場所に行くことも旅です。

新しいカフェに入ってみる、電車で桜のきれいな公園へ出かけてみる、祭りや市場に出かけて、パンや野菜を買うだけでも贅沢ぜいたくな気分になれます。旅はまわりにいくらでも転がっています。

年をとると、世の中を知った気になってしまうことがあります。自分がそう思うようになったら、脳が凝り固まっていっていると気がついてください。

世界は日々違います。季節は一日一日変わっていきます。山手線に乗っていても見えるものがあります。そういえば、やることがないので、半日ぐらい山手線をグルグルまわって景色と人を見て楽しむという人もいました。

コロナ感染が収まり(私はいまなら十分収まったと思っていますが)、お金があるなら、どんどん遠くへと旅してください。「疲れる」というのは旅に観光を盛り込み過ぎなのかもしれません。一か所を大事に観光してゆっくりするのがいいでしょう。