うつ病と認知症を見分けるポイント

まず、「症状は、いつごろからはじまりましたか?」と聞いて、本人や家族がはっきり答えられるようなら、うつ病の可能性が大です。認知症はゆっくり進行するため、いつから始まったか、はっきりしないことが多いのですが、うつ病はある時期から急に症状が出るので、いつから始まったか、おおむねわかるのです。

つまり、うつ病では、短い期間に、さまざまな症状がいっせいに現れます。外出するのが急に億劫になったり、化粧が急に面倒になるなど、さまざまな症状が、1カ月くらいの間にまとまって現れるのです。

そのため、家族に質問すると、「去年のクリスマスあたりから、こんな調子で」と、症状が始まった「日付」さえわかることがあるくらいです。

一方、認知症はゆっくり進行し、家族の人に聞いても、いつごろから発症したか、よくわからないことがあります。

たとえば、「いつからもの忘れがはじまりましたか?」と尋ねても、「2年前くらいだったかな」「3年前くらいだったかな」というような話になり、本人も家族もはっきり答えられないことが多いのです。一方、うつ病も、もの忘れを伴うことがあるのですが、それは突然はじまります。

台所の流しの近くに立って窓から見ている先輩女性
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うつ病の場合は自発的に医者にかかる人が多い

また、本人に明確な「自覚症状」があるときも、うつ病が疑われます。たとえば、うつ病の人は、もの忘れが増えたとき、本人にその自覚があり、「もの忘れが激しいのは、アルツハイマーではないでしょうか」などと、自発的に医者にかかる人が多いのです。そういう患者さんは、認知症よりも、うつ病が疑われます。

一方、認知症の人は、もの忘れが多くなっていることに、自分ではあまり気づいていません。そもそも病識(「自分は病気である」という意識)が欠如している人が多く、自らの記憶障害にあまり不安を覚えることなく、ケロリとしています。

また、私の質問に「答えられず、黙り込む」人は、うつ病の可能性大です。一方、認知症の人には、はぐらかしたり、取りつくろおうとする傾向があります。ごまかしてでも、何とか答えようとするのです。