転職者比率は4.3%…硬直的な労働市場の問題点

終身雇用や年功賃金といった日本的雇用慣行は、日本の労働市場を硬直化させています。日本の労働市場はどの程度、硬直的なのでしょうか?

労働市場の流動性の度合いを測るものとしてよく使用されるのが転職率です。図表4は、転職者数と転職者比率の推移をみたものです。ここで、転職者とは「就業者のうち前職のあるもので、過去1年間に離職を経験した者」であり、転職者比率とは就業者数全体に占める転職者数の割合です。

転職者数は、リーマン・ショック後の不況時に大きく減少しましたが、その後はコロナ禍前の2019年に過去最高の353万人まで増加を続けてきました。しかし、2020年から2年連続で減少し、2021年には288万人となっています。

転職者比率も転職者数と似たような動きをしています。2019年の転職者比率は5.2%でしたが、2021年には過去最低の4.3%まで低下しています。2002年から21年の平均転職者比率は4.9%となっています。

アメリカ人労働者は平均11回転職している

労働市場が流動的とされるアメリカと比較してみましょう。アメリカでは学校卒業後に数年間転職を繰り返したのち、比較的長期にわたり同じ職場で働くことが一般的です。米国労働統計局によれば、アメリカでは労働者が生涯で平均11回転職し、そしてその半分が18~24歳の若いときに行われます。

アメリカでは、「ジョブ・ツー・ジョブ・トランジション(Job to job transition)」と呼ばれる失業を経由しない転職が活発です。2000年代後半の世界金融危機後、その転職率(ジョブ・ツー・ジョブ・トランジションレート)は以前よりも低下していると指摘されているものの、それでも月平均2%となっており、日本の転職率(年平均5%弱)がアメリカに比べてはるかに低いことがわかります。

履歴書を書こうとする様子
写真=iStock.com/hachiware
※写真はイメージです

また、平均勤続年数を日米で比較すると、日本の11.9年に対して、アメリカは4.1年と、日本の勤続年数はアメリカの約3倍の長さとなっています。

転職のほかに労働者の動きに注目して、労働市場の流動性を測るものに「労働力フロー」と呼ばれるものがあります。

労働市場における人々の状態は、「仕事をしている就業状態」「仕事を探している失業状態」、そして「仕事をする意思を持たず仕事をしていない非労働力状態」の3つですが、この3つの状態の間を移動する労働者数が労働力フローです。

過去30年間のデータをみると、日本では毎月、労働市場に属する人の約3%がその労働力状態を変えているのに対して、アメリカでは毎月6.5%の人が労働力状態を変えており、この点からも日本の労働市場はアメリカと比較して硬直的だと言えます。