なぜ日本の終身雇用、年功賃金は時代遅れになったのか
経済が右肩上がりで成長し、また若者が豊富な人口構造のもとでは、終身雇用や年功賃金といった日本的雇用慣行は経済的に合理的なもので、世界から称賛された日本的経営の強みのひとつでもありました。日本的雇用慣行は、失業率を低く保ち、良好な労使関係の形成に大きく貢献した優れたものだったと言えます。
しかし、現在、日本的雇用慣行は時代遅れのものとなっています。なぜでしょうか? それは前提条件が変わったからです。以下、みていきましょう。
図表1は日本の経済成長率の推移を示したものです。高度成長期には年率10%程度で成長していた経済は、1970年代初頭のオイルショック後、その成長スピードを鈍化させます。さらに、1990年代初頭のバブル経済崩壊から2010年代前半までは「失われた20年」と言われるほど、経済が長期にわたり停滞しました。このように、日本的雇用慣行の前提のひとつである、持続的かつ高い経済成長がなくなりました。
この間、少子高齢化が進み、人口構造も大きく変化しました。
日本を含む多くの国では、65歳以上の人を高齢者としていますが、高齢者人口は1950年以降、一貫して増加しています(図表2)。高齢者人口は1960年には535万人でしたが、2021年には3621万人にまで増加しています。
総人口に占める高齢者の割合は1960年の5.7%から2021年には28.9%に上昇、今や国民の約3.5人に1人が高齢者となっています。なお、2021年の高齢者の総人口に占める割合を国際比較すると、日本は世界でもっとも高く、次いでイタリアの23.6%、ポルトガルの23.1%となっています。
若者人口の激減、女性の就業の増加
一方、15歳未満の若年人口は減少傾向にあります。15歳未満人口は1960年には2843万人で、総人口に占める割合は30.2%でしたが、2021年には1478万人にまで減少、その割合は11.8%と過去最低となっています。
1990年代後半からは高齢者人口が若年人口を上回るようになっており、日本的雇用慣行の前提条件である、若年人口が豊富な人口構造はおよそ25年前には崩壊していたことがわかります。