就職率と離職率にも圧倒的な差が…
また、就職率と離職率を日米で比較すると、日本の就職率と離職率はそれぞれ月平均14.2%と0.4%であるのに対して、アメリカの就職率と離職率はそれぞれ25~32%、3~5%となっています。アメリカと比較して、日本では職を失う確率がかなり低い一方で、職をみつける確率も低いことがわかります。つまり、日本では一度仕事をみつけるとなかなか失いにくいが、いったん失業すると職をみつけにくい環境にあると言えます。
ところで、なぜ、アメリカでは転職が活発なのでしょうか? 大きな理由として、転職がキャリアアップの手段になっていることがあげられます。
最近、「ジョブ型雇用」あるいは「メンバーシップ型雇用」という言葉を耳にする機会が多くなりました。日本の雇用のあり方はメンバーシップ型であるのに対して、アメリカの雇用はジョブ型だと言われます。
ジョブ型とメンバーシップ型雇用の大きな違いは、仕事と人のどちらが先に存在するかということです。
ジョブ型雇用では、まずジョブ(仕事)が存在します。そして、その仕事を担えるだけのスキルや経験を持った人がいれば、その人を雇用してその仕事に割り当てるというものです。仕事の内容や範囲などは、具体的にジョブディスクリプション(職務記述書)に定められています。
メンバーシップ型の日本、ジョブ型のアメリカ
それに対して、メンバーシップ型雇用では人が先にあります。企業はまず人を採用してから、その人に仕事を割り当てます。まず人がいるので、企業は人材を必要に応じて配置転換できます。また、従業員は人事異動で様々な職務に関わることができるため、社内でスキルアップやキャリアアップを図ることが可能です。
ジョブ型雇用だと、その仕事を行うためのスキルや能力などがあらかじめ決まっているので、その仕事をやり続けてもキャリアアップがしにくいという面があります。労働市場で求められる人材であり続けるためにも、スキルアップできる環境を求めて転職をするというのがアメリカでは一般的なのです。
また、待遇改善を目指して転職を行っているという面もあります。若年男性のキャリアにおける最初の10年の労働所得上昇の約4割が転職によるという研究結果があるなど、実際に、アメリカでは転職により賃金が大きく上昇します。また、職場環境、通いやすさ、仕事のきつさや危険度、その他の福利厚生など、広い意味でのアメニティーが転職先で優れていることを指摘する研究もあります。