5〜6歳の不活化ワクチンでポリオを予防
じつはポリオウイルスは、日本の環境水からも検出されることがあります。繰り返し検出されるわけではなく、伝播型として分類されている型でもありません。でも、日本国内で検出されているので海外から持ち込まれている可能性があり、安心はできないのです。
日本のポリオワクチンの接種回数は少なく、1歳半までの4回が標準。先進国の中で、こんなに回数が少なく、こんなに早い年齢で終了してしまう国は他にありません。多くの国では不活化ポリオワクチンは5回接種し、最後に受ける年齢は4〜14歳です。そのため、日本でも5〜6歳で5回目の接種(自費)をすることが推奨されていますし、患者会であるポリオの会、小児科学会などの多数の学会からも、5回目の定期接種化の要望が出ています。
ポリオワクチンが、まれにワクチン由来のウイルスで発症者を出してしまう生ワクチンから、そのリスクのない不活化ワクチンになり、4種混合(ジフテリア・破傷風・百日咳・ポリオ)ワクチンとなったのは2012年。数年以内には、4種混合ワクチンはヒブワクチンを含めた5種混合ワクチンになり、生後2カ月から受けられるようになるといわれています。
免疫を高めるより健康を守ることが大事
「昔はどの感染症にもかかったものだ。そのほうが自然で免疫がしっかりつく」と言う人がいます。でも、それは正しくありません。感染症にかかると苦しいだけでなく、合併症が起こったり、後遺症が残ったり、亡くなったりすることがあるのを、今回の新型コロナウイルス感染症でも実感した人が多いのではないでしょうか。
たとえ免疫がついたとしても、後遺症が残ったり、亡くなったりしては本末転倒です。ワクチンの目的は免疫をつけることではなく、健康を守ること。つまり感染症によって苦しんだり、後遺症が残ったり、命を失ったりしないことです。
しかも、感染症というのは、一度かかったからといって二度とかからないわけではありません。新型コロナウイルスと同様に、何度もかかるものが多いのです。麻疹や風疹でさえ生涯に2回かかる人がいますし、今回のコロナ禍で帯状疱疹が増えたことも話題になっています。
水ぼうそうに一度かかったことがある人は、急に帯状疱疹になることがあるのは知っている人も多いですね。「mRNAワクチンを受けると遺伝子が書き換わる」という根拠のない説を信じている人がいますが、mRNAは数時間で消えてしまいます。一方、水ぼうそうにかかったら、DNAウイルスである水痘・帯状疱疹ウイルスが細胞内に加わってしまいます。そのほうがずっと怖くないでしょうか。
ですから、ワクチンで防ぐことのできる病気は、ぜひワクチンで予防しましょう。妊娠中のワクチン接種はリスクがあるどころか、妊婦さんご自身だけでなく赤ちゃんを守ることもあるということを知ってください。
もちろん、子供は生後2カ月から受けられるワクチンをしっかり受けることが大切です。