「自分で思いついたことは体にしみ込む」
「『ベンチマークするのは他のチームではないと思う』と伝えました。いろいろディスカッションしていくうち、『昨年の自分たちを超えます』という言葉が出てきて……。よし、その言葉を待ってたんだぞ、と」
何でもかんでも上司や先輩が教えてしまえば身につきません。一方、答えを自分自身で見つけた経験は自信につながります。上司の仕事とは部下に気づいてもらう機会を多く作ること。答えだけを教えることではありません。
また、「あなたのいいところはここです。ここをもっと伸ばしましょう」といった個人のキャラクターまで指摘するような細かい指導をすれば上司は仕事をした気にはなるでしょう。しかし、実際の仕事の場面では個人のキャラクターが大きく影響を及ぼすことはほとんどありません。
小西さんは「自分で思いついたことは体にしみ込みます」と言っています。トヨタの教育とはそういうものです。答えを教えるのではなく、問題の解き方に気づいてもらう。問題解決の切り口はいくつもあることを自覚してもらう。
そうすれば、どこの会社に転職しても、問題を解決することができます。
J2で初めてJ1時代の前年の観客数を超えた
さて、ではグランパスがJ2に降格して、予算はどうなったのでしょうか。翌年は復帰できたのでしょうか。
小西さんは教えてくれました。
「予算は前年より増やしました。観客動員を増やすことに集中しました。私はあの年、毎日のように試合のみならず練習も見ていました。結局、観客動員は前年の104%くらいで、J2に落ちたのにJ1時代の観客数を超えたんです。Jリーグ史上初、始まって以来のことでした。
そして、J1にも復帰しました。ただ、J2で3位だったんです。1位、2位だと自動昇格なんですが、3、4、5、6位はプレーオフ。そのなかから1チームです。しかし、なんとか勝ち抜くことができました。
もうほんとに疲れました。最後の最後まで、ハラハラドキドキで。こればっかりはもう見守るしかないですから。選手ががんばるしかなかった。しかし、おかげさまでありがとうございました」